コロナショックで人材紹介市場に何が起こるか?リーマンショック前後の20年の変化がヒントに!

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今回は、2008年9月15日にリーマンブラザーズの経営破綻を引き金としたいわゆるリーマンショックに関して、当社社内の人材紹介応援研究所でまとめてきた社内レポートを共有します。

人材紹介応援研究所とは?

コロナショックが人材紹介業界へ及ぼす影響とは

コロナショックが人材紹介業界へ及ぼす影響とは

最近「『コロナショック』は、リーマンショックと比べて人材紹介業界への影響は大きいか、小さいか?」という話題を良く聞くようになりました。

結論、私達の考えは「リーマンショックから学ぶことは多いものの、コロナショックは、原因と対処や終息方法が明確である以上、それが引き起こす不況は時限的であり、コロナショックが影響する有料職業紹介市場の落ち込みもリーマンショックほどでなく、中小のエージェントにとって、大きく飛躍するチャンスでもある」です。

(なおここでは、コロナショックとは、新型コロナウイルスの感染拡大が引き起こすであろう経済不況の総和と定義しています。)

コロナショックは、特に中小の有料職業紹介事業者にとっては、これからの取組み次第では大きな可能性にもつながると考えています。まずは「過度な恐れ」を持つことなく、これからの転換期をチャンスにするためにも、今回はリーマンショック時に起こったことをまとめていきます。

市場規模は3割減、有効求人倍率は0.45倍と過去最低の落ち込みを記録

市場規模は3割減、有効求人倍率は0.45倍と過去最低の落ち込みを記録

過去20年の厚生労働省が公開する職業紹介事業報告書を分析してきたところ、様々なことが見えてきました。

下記は、過去20年の有料職業紹介事業の市場規模(手数料収入)、事業所数、年末の有効求人倍率、日経平均大納会終値、それぞれの数値の前年比を年次でまとめたものとなります。

有料職業紹介事業の市場規模

このデータから、次の内容が読み取れます。

  • リーマンショックの前年の2007年からサブプライムローン問題があり、すでにリーマンショックの前兆となる経済の不安要素は露呈し始めており、2007年年末の日経平均は前年比89%に下回っていた。
  • 有効求人倍率は2年を経て1.02倍(2007年)から0.45倍(2009年)まで下がっていた。
    →1「就職氷河期」として1960年代後半以降最悪の有効求人倍率であった1999年の0.49倍から10年かけて改善した値をたった1年で更新し、50年の歴史で見ても最悪となる0.45倍まで下落した。
  • 有料職業紹介市場の手数料収入の落ち込みは少し時期がずれており、顕著に現れたのは2年後の2010年で2008年の67%まで下落した。
  • 日経平均はリーマンショック翌年の2009年末には前年比119%で回復していた。
  • 有料職業紹介事業所数はリーマンショック前後の10年で非常に早いペースで新規参入がみられたが、リーマンショック2年後の2010年から2年はほぼ伸びが停滞し、2012年には過去20年において初めて事業所数が前年割れとなった。
    →これは2012年の派遣法改正の影響による撤退などもあるため異常値と考える。
  • 有料職業紹介事業の市場規模となる手数料収入は、2010年に2006年と同等規模まで縮小しつつも、その後10年は安定して拡大している。
  • 2011年には東日本大震災があったにも関わらず有料職業紹介事業は、前年比で116%と力強い成長を実現している。

リーマンショック後に、人材ビジネス会社で起こったこと

リーマンショック後に、人材ビジネス会社で起こったこと

2020年4月11日に下記リリースが発表されました。

リクルート、4500億円融資枠要請: 日本経済新聞

 

リーマンショック時に雇用に大きく影響を受けた産業は主に製造業で、雇用調整として、主に次のようなことが行われました。

  1. 残業規制
  2. 臨時・季節、パートタイム労働者の再契約停止・解雇
  3. 派遣労働者の削減
  4. 希望退職者の募集、解雇

2008年年末には、年越し派遣村が話題になるなど、派遣事業は不況に大きく左右される事業であることが明るみにでました。

リクルートによる4500億円の融資枠要請は、こうした事態に先手を打った動きと考えられます。今後大手人材総合会社では同様の対策が行われる可能性があると予測しますが、リクルートの動きがあまりにも早いと社内では話題となりました。

その他にもリーマンショック時に話題となった人材ビジネス会社での動きとしては下記のようなものがあり、どうしても人材ビジネスに長く属される方々からすると、「不況=人材ビジネスは絶望的」「とにかく不安、恐ろしい」という考えになってしまうかもしれません。

 

2009年1月 人材紹介「JACジャパン」が希望退職と内定辞退を募集

https://www.fukeiki.com/2009/01/jac-recruitment.html

 

2009年4月「エン・ジャパン」希望退職で社員25%超を人員削減へ

https://www.fukeiki.com/2009/04/en-japan.html

 

2009年6月 ラディアHDが債務超過で上場廃止、事業再生ADR申請へ

https://www.fukeiki.com/2009/06/radia-goodwil-adr.html

 

2009年9月 リクルートの求人情報誌「ガテン」が休刊へ

https://www.fukeiki.com/2009/09/recruit-gaten.html

 

2009年10月 求人情報誌の「アルバイトタイムス」が人員削減と大阪版の休刊

https://www.fukeiki.com/2009/10/domo-atimes-cut-100-job.html

 

特に2009年1月の年始早々に、JAC Japan(現在のJAC Recruitment)が、当時の正社員800人中の300人、2009年4月に入社予定の新卒内定者130人に内定辞退促進を行ったことは、業界全体に非常に大きな衝撃を与えました。同様にリストラに踏み切ったエン・ジャパンの越智会長のインタビュー記事にもあるとおり、売上が半分以下に急激に落ち込むなか早期にリストラに踏み切ったことは、当時とても話題になりました。

一方で、そういった大手人材ビジネス会社で経験を積まれた方々の多くが人材紹介市場で独立されたことで、リーマンショック後もしばらくは有料職業紹介事業所数は減ることなく成長し、優秀な方々が増えたことで業界のレベルの底上げにも繋がりました。

「リーマンショックを乗り越えたメンバーが、現在幹部として中枢を担っている」という話しをよく聞きますが、非常に厳しいリーマンショックを経験したことにより、業界全体が再度サービスレベルを見直し、人材紹介手数料の意味や人材紹介業界自体の価値を見直すにはとても良い機会になったとも考えています。

では、このリーマンショックとコロナショックはどういった点で異なり、「中小のエージェントにとって、大きく飛躍するチャンスでもある」のでしょうか?

次回は、「(仮題)コロナショックで大きく飛躍する?人材紹介会社が準備すべきこと」を予定しています!

今後このブログでは、通常投稿に加えて、人材紹介応援研究所による特別企画として専門性を活かした記事を投稿していく予定です。業界みなさんの叡智を集結し、この日本経済、世界経済の大転換期を、業界発展のチャンスに展開していきましょう!

この企画のレポートや数値、分析等にご意見等ございます際は、どんどんアップデートしていきますので、何卒ご意見をコチラまでお願いいたします!

 

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片岡良彰

大手人材企業にて、人材紹介と求人広告の営業に従事、その後人材ベンチャー企業で新卒紹介・中途紹介の両面コンサルタントを経験。
得意業界は機械系・人材系。

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