人材紹介業でたびたび耳にする言葉に「グリップする」という言葉があります。あまり聞き馴染みのない方にとっては「どういう意味なのか分からない」「自分の解釈が合っているのか不安である」と考えることもあるでしょう。
そこで今回は、人材紹介業でよく耳にする「グリップする」の意味と活用方法について解説していきます。
- 本来の「グリップする」の意味とビジネスでの使い方
- 人材紹介での「グリップする」の意味と使い方
- 人材紹介ビジネスで「グリップする」を使うデメリット
- 人材紹介で好ましい「グリップする」の言い換え表現
- 人材紹介で「グリップする」を使うときは注意が必要
本来の「グリップする」の意味とビジネスでの使い方
そもそも「グリップする」という言葉自体は、人材業界業のみで使われ始めたわけではなく、元々使われていた言葉です。まずは、本来の意味とビジネスにおける「グリップする」の使い方について解説します。
グリップは握るの意味
本来の「グリップ」は、「握る」という意味で使われています。もともとは英語の動詞であり、名詞として使うときには握る部分の名称になります。
たとえば、卓球のラケットやテニスラケットの握る部分などを「グリップ」と呼んでいます。
スポーツ分野以外でも、カメラ業界では一眼レフカメラを握る仕草を「グリップ」と呼んだり、地面を掴むという意味で靴に使われることもあります。
したがって、本来の「グリップ」はビジネス用語としての意味は持っていませんでした。
ビジネスのグリップの使い方
現在、ビジネスにおいて使われている「グリップ」には、次の3つの意味があります。
- 約束をする
- 認識を揃える
- 関係性を維持する
1つ目の意味は、「約束をする」という意味です。約束というのは、ビジネスにおいて次のアポイントを獲得することや商談の約束を取り付けることです。
たとえば、上司から部下に対して「取引先のお客様とあの件についてグリップできているか?」という使い方をします。意味としては、「取引先のお客様と案件の約束が取れているのか」ということです。
2つ目の意味は、「認識を揃える」という意味で使われます。ビジネスでは、認識を揃えることが非常に重要です。
認識が揃っていない場合、お互いが正しいと思って進めていても、認識の齟齬がわかった時点で作業が中断してしまいます。最悪のケースでは、今までやっていた作業が全て無駄になってしまい、最初からやり直さなくてはいけなくなる可能性もあります。
たとえば、上司から部下に対して「今進めている案件は、お客様とのグリップが取れているか?」という使い方をします。意味としては、「取引先のお客様と案件の認識が揃っているか」ということです。
3つ目の意味は、「関係性を維持している」という意味です。ビジネスにおいて、相手との関係性を良好に保つことは必須です。
関係性を良好に保っておくことで、仕事がスムーズに進むだけでなく、何か問題や心配事が出てきた場合にも相談してくれるようになります。
相手が問題や困りごとを抱えている際は、解決するビジネスチャンスとも捉えられるため、企業にとっても大きな利益をもたらす可能性があります。
使用例としては、上司から部下に対して「あのクライアントとのグリップはできているか?」という使い方をします。意味としては、「クライアントと良好な関係性を保てているのか」という意味を持ちます。
ここまで、ビジネスシーンにおける「グリップする」の意味を解説しましたが、ビジネスでの「グリップする」自体が一般的ではないため、同じ業界でない方やお客様に対しては使わないのが無難でしょう。
人材紹介での「グリップする」の意味と使い方
「グリップ」という言葉本来の意味と、ビジネスシーンでの意味がわかったところで、次は人材紹介サービスにおける「グリップする」の意味と使い方をご紹介します。
人材紹介サービスにおいての「グリップする」は、「求職者との関係を良好に維持すること」を意味します。
たとえば、「スキルが優れていて、優秀な人材をグリップする」「社内の面接力の向上や選考フローを見直して、企業としての採用グリップ力を向上させる」といった使い方をします。
1つ目の例文では、「優秀な候補者とよい関係性を構築し、企業へ入社させたい」という意味で使われています。2つ目の例文では、「企業としてのグリップ力」という使い方で、これは「採用関連の質を向上させ、優秀な人材との関係性を構築しやすい状態を作る」ことを指します。
このように、人材紹介サービスにおいても、ビジネスシーンでの使われ方とほぼ同様の意味で「グリップする」が使われています。
人材紹介ビジネスで「グリップする」を使うデメリット
人材紹介サービスで「グリップする」という言葉を使うデメリットも存在します。デメリットとしては、次の2つが挙げられます。
- 社員が言葉の意味を理解できていない場合がある
- 求職者に悪い印象を与えやすい
それぞれ詳しく解説していきましょう。
社員が言葉の意味を理解できていない場合がある
1つ目のデメリットは、そもそも使われる人が言葉の意味を理解できていない場合です。最近では、ビジネスにおいて多くの横文字が使われています。たとえば、「ナレッジ」「コンセンサス」「シナジー」など、辞書を調べてもビジネスシーンの使われ方とは意味が異なるものもあります。
こうした場合、入社したての社員にとってはわからない言葉だらけになってしまうでしょう。また、人によって解釈が異なる場合もあり、認識の齟齬が起きれば業務に大きな影響を与えてしまうかもしれません。
たとえば、人材紹介サービスで上司が部下に「今選考の進んでいる優秀な求職者に対して、グリップしてきてくれる?」と伝えたとします。
上司としては、「求職者との関係性を良好に構築していくためにも、今までの経歴や希望している条件などを丁寧にヒアリングしてきて欲しい」という意味で伝えたとしても、部下は「求職者にいち早く入社先を決めてもらうためにアプローチをして、こちらの手柄にしよう」という意味で解釈してしまったとします。
その結果、両者の認識に齟齬が生まれてしまい、求職者とも良好な関係性が築けなくなったり、人材紹介サービス自体の評判を下げてしまったりする危険性があります。
そのため、業界歴が浅い人や新人に対しては使用しない方がよいでしょう。直接使用しなくても、周りの会話を聞いているうちに自然と意味がわかるようになり、必要に応じて使用するようになるものです。
求職者に悪い印象を与えやすい
2つ目のデメリットは、求職者が聞いた時に悪い印象を与えやすいことです。
人材紹介サービスでは、「グリップする」を「求職者の入社状態などを上手くコントロールする」という意味で使うことがあります。
この意味を求職者が知った場合、丁寧にサポートをして親身になっていたとしても、「結局最終的には企業に入社させたいだけなんだ」という気持ちを抱かせてしまい、人材紹介サービス自体の評判を下げる危険性があります。
そもそも、人材紹介サービスは求職者を企業に入社させ、報酬としてインセンティブが入る仕組みです。しかし、最も重要なのは、候補者と人材紹介サービスの信頼関係を構築することです。
お互いに信頼し合うことで、人材紹介サービスは求職者から詳しい希望を聞けたり、人柄を知ることができます。「求職者にとってどの企業が最も力を発揮できて、人柄にも合っているのか」と考えてサポートし、結果的に求職者にとって合った企業へ入社となって、報酬にもつながります。
こうしたサポートは、求職者に対しても伝わるものです。親身になって相談に乗り、アドバイスをしていれば信頼関係が生まれ、逆に仕事で成果を上げるためだけにアドバイスしていると、求職者側もそれに気付いてサービスを利用しなくなるかもしれません。
したがって、まずは信頼関係の構築からスタートしていくのが重要です。その後、信頼関係を構築する中で得られた候補者の情報を分析していき、候補者のためになるサポートやアドバイスを心がけましょう。
人材紹介で好ましい「グリップする」の言い換え表現
「グリップする」にはさまざまな意味が含まれているため、状況に応じて「認識を揃える」「相手との関係性を構築する」「約束をする」などの意味を使い分けるのがよいでしょう。上手く使い分ければ、適切なコミュニケーションを図ることができます。
たとえば、これから求職者と転職先について話す機会があるときに「相手から現状や将来の希望についてヒアリングをし、しっかりグリップできるように心がけるようにしましょう」と声をかければ、「関係性の構築」を目標に求職者との面談に臨めます。
しかし、新しく入社したスタッフに対しては言葉だけの意味を伝えるのではなく、人材紹介サービスについて詳しく知ることができるセミナーなどを活用し、人材紹介サービス全体の理解を深めるのが重要です。
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人材紹介で「グリップする」を使うときは注意が必要
今回は、人材紹介業でよく耳にする「グリップする」の意味と活用方法について解説しました。
「グリップする」には、本来の意味とビジネスで使われている意味があります。本来は、ラケットのグリップやバットのグリップなど、「握る」意味で使われていますが、ビジネスでは「関係性を構築する」「認識を合わせる」「約束をする」などの意味で使われています。
しかし、使い方によっては相手に間違った解釈で伝わってしまったり、求職者に悪い印象を与えたりすることもあります。
「グリップする」を正しく使用したり、相手に意図を理解してもらうためには、言葉の意味を知るだけではなく、セミナーなどを通じて人材紹介業界に対する理解を深めた上で、場面に応じた使い分けが重要です。
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