人材紹介の事業を行う際には、必ず免許の取得が必要となります。しかしこの免許取得には、数多くの要件や提出書類があります。ここでつまずいてしまうと、事業開始時期が大幅に遅れることも…。
本日は、そんな人材紹介の免許取得の中から、有料職業紹介事業の許認可免許取得の方法や注意点について、わかりやすくお伝えします。これから人材紹介事業者として独立をお考えの方は、ぜひ参考にしてください!
有料職業紹介事業は許可が必要!
有料職業紹介事業(人材紹介)とは
職業紹介事業は、職業安定法において、報酬を支払って労働力の提供を求める「求人企業」と、報酬を得るために労働力を提供する「求職者」の雇用関係の成立を斡旋することを指します。
国が定める職業紹介事業には、後述の通り2種類ありますが、求人者と求職者の間に入り雇用関係の成立を斡旋し、内定承諾に繋がると、企業から成功報酬として手数料を支払われる事業を「有料職業紹介事業」と言います。有料職業紹介事業は一般的には「人材紹介」「人材紹介業」「人材紹介事業」などと呼ばれています。
人材紹介は人材派遣と異なり、内定承諾の際に求職者と紹介先の求人企業が直接雇用契約を結びます。
▼人材紹介のイメージ図▼
▼人材紹介と人材派遣との違いはこちらをご覧ください▼
職業紹介事業には2種類ある
そもそも職業紹介事業には、「有料職業紹介」と「無料職業紹介」の2種類があります。
有料職業紹介
営利を目的とするか否かにかかわらず、人材紹介に関する手数料又は報酬等の対価を受けて行う職業紹介事業のこと。市場でよく呼ばれる「人材紹介」は対価を受け取る、有料職業紹介のことを指します。紹介する職種に制限があり、港湾運送業務に就く職業と建設業務以外の職種に関しては、地域職種に関係なく職業紹介をおこなうことが可能です。
無料職業紹介
営利を目的とするか否かにかかわらず、 いかなる名義でも紹介に関する手数料又は報酬等の対価を受けないで行う職業紹介事業のこと。報酬を受け取らないハローワークや大学のキャリアセンターなどがこれにあたります。無料職業紹介は紹介する職種に制限はなく、いかなる場合でも報酬を受け取ることはできません。
有料職業紹介、無料職業紹介のどちらを始める場合であっても免許取得が必要となりますが、本記事では有料職業紹介の免許取得についてご紹介します。
なぜ免許が必要なのか?
人材紹介は、厚生労働省の需給調整課管轄の国許認可事業です。そのため、免許を取得しなければ、人材紹介をおこなうことはできません。人材紹介の許可を厚生労働大臣から取得せずに業務を行うと違法行為となり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
次のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる。
イ 厚生労働大臣の許可を受けずに有料職業紹介事業を行った者(第1号)
ロ 偽りその他不正の行為により、有料職業紹介事業の許可、有料職業紹介事業の許可の有効期間の更新、無料職業紹介事業の許可、無料職業紹介事業の許可の有効期間の更新を受けた者(第1の2号)
免許取得にはいくつもの要件がある
人材紹介は、参入障壁の低さから注目され、事業所数も年々増え続けている注目の事業の一つでありますが、許認可を申請する際にはいくつもの要件があり、提出する書類も非常に複雑なことから、一度の申請で免許が取得できることは難しいです。
人材紹介(有料職業紹介)事業許可申請の流れ
免許取得までの期間
人材紹介の免許取得には、審査があるため約2〜3ヶ月程度かかります。
免許の取得日は毎月1日。最短で許可がおりるのは書類申請後の翌々月末となります。許可が通らなければ、再度申請が必要となり、許認可取得までさらに2ヶ月を要します。
例えば、7月1日に免許を取得したい場合は、4月までに準備を整えた上で申請をする必要があります。事業開始予定日から遡ってスケジュールをたて、余裕をもって必要書類の準備をし、一度で要件を満たせるように事前準備の徹底をしましょう。
免許取得までの流れ
人材紹介免許取得までの流れは以下の通りです。
- 職業紹介責任者講習会の受講(1日)
- 申請書類の作成 (数日~1週間)
- 免許の申請(1日)
- 審査(1日)
- 現地調査(1週間)
- 有料職業紹介許可証交付(2~3か月)
- 人材紹介事業スタート
▼職業紹介責任者講習会の詳細はこちらをご覧ください▼
▼現地調査の詳細はこちらをご覧ください▼
有料職業紹介事業の許可要件
有料職業紹介事業の免許を申請するためにはおおきく以下4つの要件を満たすことが必要です。
1)職業紹介責任者が在籍していること
有料職業紹介事業の許可申請は、事業主単位(会社単位)で行います。法人でも個人でも申請可能ですが、職業紹介責任者は1事業所に1名、職業紹介従事者の50名あたり1名以上在籍している必要があります。
職業紹介責任者の要件は、3年以上の就業経験のある成人している人が、5年以内に職業紹介責任者講習を受講し、受講証明書を発行されている必要があります。受講証明書の発行前には、理解度確認試験があり、合格をした方のみに証明書が発行されます。
▼職業紹介責任者の詳細はこちらをご覧ください▼
2)完全に区分けされた面談スペースがあること
人材紹介のオフィスの要件として、完全に区分けされた個室が必要となります。個人情報が守られないオープンスペースは、面談スペースにすることはできません。自宅を事務所とする場合は、居住スペースと事務所スペースを完全に区別することなども求められます。
また、オフィス近辺に公序良俗に反する風俗営業などの施設がないこと、密集しているエリアではないことも必要です。
賃貸契約をしたり、自宅の一部をオフィスに改築した後に、「この事務所では許可がおりない!」とならないように、事前にしっかりと確認しましょう。事務所の基準で、特に重要になるのはこの3点です。
- 事務所専用の固定回線があるかどうか
- 鍵のかかる金庫やロッカーが設置されているか
- 高さ約180cmのパーテーションで区分けされた面談スペースがあるか
ハードルの1つとなっていた、「広さ20㎡」の縛りが、2017年に法改正で撤廃されました。また、レンタルオフィスでも免許の申請ができるようになりましたが、オフィスを選定する際に、面談スペースのレイアウトやデザインには注意が必要です。レンタルオフィスは、デザイン重視の内装が多いので、ガラス張りの共有会議室などは少なくありません。しかし、「区分けされた面談スペース」としては認められなくなります。
▼オフィス(事業所)の要件詳細はこちらをご覧ください▼
3)財産要件が条件を満たしていること
以下2つの条件を満たしている必要があります。
➀基準資産額 ≧ 500万円
財産要件として、まず基準資産額(資産の総額から負債の総額を控除した額)が500万円以上であることが求められます。
事業所の数が2つ以上であれば、500万円に事業所の数を乗じた額以上が必要となります。
例)本社と支社の2つの事業所で紹介事業を行う場合は基準資産額1,000万以上が必要となります。
➁現金・預金の額 ≧ 150万円
次に、自己名義(法人又は個人)の現金・預金の額が150万円以上あることが求められます。
事業所の数が2箇所以上であれば、1事業所につき60万円を加えた額が必要です。
▼資本金についての詳細はこちらをご覧ください▼
4)個人情報を適正に管理していること
人材紹介では数多くの個人情報を取り扱います。
そのため、個人情報を適正に管理し、求人者や求職者の秘密を守るために必要な措置が講じられていることを求められます。
2022年10月に許可基準が改正されます
職業安定法が改正され、求人等に関する情報の的確な表示や個人情報の保護に関するルールが変わります。その変更に伴い、有料・無料職業紹介事業の許可基準が改正されます。
変更ポイント➀個人情報の取り扱いに関するルール
「個人情報を適正に管理し、および求人者、求職者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていること」として以下の事項が追加となりました。
- 求職者等の個人情報がどのような目的で使用されるかを、求職者等が分かるように具体的に明示すること
- 個人情報を収集する際には、本人の同意の下で、本人から直接収集すること
- 求職者等本人の同意を得る際には、求職者等が適切な判断ができるように具体的で詳細に明示し、必要な範囲を超えて個人情報を使用することに対する同意を職業紹介の条件としないこと
変更ポイント➁求人等に関する情報の表示のルール
業務の運営に関する規程の要件について、「求人等に関する情報の的確な表示」に関する内容を含む業務運営規程を有し、これに従って適正に職業紹介事業を運営することが必要です。
参考:厚生労働省(職業安定法 改正のポイント)
人材紹介の許可申請手数料
許可申請に必要な手数料は下記の通りで、合計140,000円です。
- 登録免許税 90,000円
- 登録手数料 50,000円
こちらは許可申請のみにかかる手数料のため、実際に人材紹介業を立ち上げる際には、この他に定款認証なども必要となります。
なお、事業所が1つ増えるとその事業所ごとに18,000円が追加でかかります。
許可が下りなかった場合でも登録手数料は返金されないため、しっかりと準備した上で申請するようにしましょう。
人材紹介の許可申請必要書類
必要書類は以下の通りです。
- (1) 有料職業紹介事業許可申請書 3部(正本1部、写し2部)
- (2) 有料職業紹介事業計画書 3部(正本1部、写し2部)
- (3) 届出制手数料届出書部 3(正本1部、写し2部)
※ (3)については、上限制手数料による場合には提出は不要です。 - (4) 添付書類2部(正本1部、写し1部)
必 要 と さ れ る 添 付 書 類 | 法人の 場合 |
個人の 場合 |
① 法人に関する書類 | ||
・定款又は寄附行為 | ◯ | |
・法人の登記事項証明書 | ◯ | |
② 代表者、役員、職業紹介責任者に関する書類 | ||
・住民票の写し(番号法第2条の規定に基づく個人番号の記載 | ◯ | ◯ |
のないものであり、本籍地の記載のあるものに限る。) | ||
・履歴書 | ◯ | ◯ |
・代表者役員の法定代理人の住民票の写し及び履歴書(代表者 | ◯ | ◯ |
役員が未成年者で職業紹介事業に関し営業の許可を受けてい | ||
ない場合。なお、営業の許可を受けている場合は、その法定 | ||
代理人の許可を受けたことを証する書面(未成年者に係る登 | ||
記事項証明書)。) | ||
・職業紹介責任者講習会受講証明書(以下「受講証明書」とい | ◯ | ◯ |
う。)の写し(職業紹介責任者に限る。) | ||
③ 資産及び資金に関する書類 | ||
・最近の事業年度における貸借対照表及び損益計算書 | ◯ | ◯ |
・預貯金の残高証明書等所有している資産の額を証明する書類 | △ | |
(貸借対照表から計算される基準資産が納税証明書及び確定 | ||
申告書により証明される場合は、残高証明書等は不要) | ||
・所有している資金の額を証明する預貯金の残高証明書(貸借 | △ | |
対照表から計算される事業資金が納税証明書及び確定申告書 | ||
により証明される場合は、残高証明書等は不要) | ||
・最近の事業年度における確定申告書の写し(法人にあっては | ◯ | ◯ |
法人税の確定申告書別表1及び4、個人にあっては所得税の | ||
確定申告書第一表) | ||
・最近の事業年度における法人税又は所得税の納税証明書 | ◯ | |
((その2)による所得金額に関するもの) | ||
・最近の事業年度における株主資本等変動計算書 | ||
④ 個人情報の適正管理に関する書類 | ||
・個人情報の適正管理及び秘密の保持に関する規程(以下「個 | ◯ | ◯ |
人情報適正管理規程」という。) | ||
⑤ 業務の運営に関する書類 | ||
・業務の運営に関する規程 | ◯ | ◯ |
⑥ 事業所施設に関する書類 | ||
・建物の登記事項証明書(申請者が所有している場合) | ◯ | ◯ |
・建物の賃貸借又は使用貸借契約書(借りている場合) | ◯ | ◯ |
⑦ 手数料に関する書類 | ||
・手数料表(届出制手数料の届出をする場合) | ◯ | ◯ |
⑧ 相手先国に関する書類(国外にわたる職業紹介を行う場合) | ||
※相手先国において職業紹介が認められている根拠となる規定 | ||
に係る部分のみ。 | ||
・相手先国の関係法令及びその日本語訳 | ◯ | ◯ |
・相手先国において、国外にわたる職業紹介について事業者の | ◯ | ◯ |
活動が認められていることを証明する書類及び当該書類が外 | ||
国語で記載されている場合にあっては、その日本語訳(取次 | ||
機関を利用しない場合に限る。) | ||
⑨ 取次機関に関する書類(国外にわたる職業紹介を行う場合で | ||
あって、取次機関を利用する場合に限る。) | ||
・取次機関及び事業者の業務分担について記載した契約書その | ◯ | ◯ |
他事業の運営に関する書類及びその日本語訳 ※業務分担が | ||
わかる部分のみ。 | ||
・相手先国において、当該取次機関の活動が認められているこ | ◯ | ◯ |
とを証明する書類(相手先国で許可を受けている場合にあっ | ||
ては、その許可証の写し)及びその日本語訳 | ||
※相手先国において当該取次機関の活動が認められているこ | ||
とを証明する部分のみ。 |
人材紹介の免許申請まとめ
有料職業紹介の許認可申請では、要件を満たしているのかどうかわかりにくい点、申請書類をすすめていくにつれつまずきやすいポイントがたくさんあります。
- 兼業で職業紹介責任者になれないなんて知らなかった!
- 自宅兼事務所にしたかったのにこのレイアウトではだめだと言われた!
- このレンタルオフィスは許可がおりる?
クラウドエージェントでは有料職業紹介の許認可申請代行件数No.1の社会保険労務士法人が、資産基準をはじめとした、申請に関わるアドバイスをさせていただきます。
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