「仕事相手のご家族に感謝される仕事、そうそうないと思うんです」藤野未来(株式会社grooves)前編

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藤野未来(株式会社grooves)

人材紹介は「お見合いおばさん」だと思ってます

――まずは、現在の藤野さんの業務内容を教えてください。

藤野 株式会社groovesの藤野と申します。現在は大阪支社で、キャリプロという人材紹介業の独立支援をしています。キャリプロを経て独立された方のサポート・トレーニング、創業のお手伝いなども行っています。さらに兼任で求人企業の開拓、リクルーティングアドバイザーとしてのヒアリングや採用コンサルティングも実施しています。

サポートやトレーニングについては、キャリアアドバイザーとしてOJTのように寄り添い、その方が成功するよう日々の業務を見ています。

――日々の業務に付いてるんですね。

藤野 そうですね、セミナーやトレーニングを通して転職エージェントの知識は習得ができても、実際の人材紹介の業務をしてみると、想定できなかった課題に直面することもたくさんあるので。困った時にはいつでも頼ってもらえるように、サポートしています。

――キャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザーには、どういう違いがあるんですか?

藤野 キャリアアドバイザーは求職者のご希望やお悩みをお伺いしながら今後のキャリアを一緒に考え、転職のサポートをする仕事です。リクルーティングアドバイザーは、求人企業の採用活動が成功するようにサポートするお仕事で、求人への応募が少ない、応募が来ても求める人物像に合致しないなど、課題を一つ一つ解決し、採用成功に導くことが業務内容になります。

私は転職エージェント向けの求人データベース、クラウドエージェントのリクルーティングアドバイザーとして、愛知県から西を担当しています。

――「クラウドエージェント」に求人掲載したあとのフォローアップもあるかと思いますが、どのあたりまで見ておられますか?

藤野 求職者の方がご入社するまでをフォローしています。掲載したら終わりではなく、企業のことを理解したうえで、転職エージェントさんに「この求人のこういうところがおすすめですよ」とご提案したり、「このようなご経験のある方は書類選考通過しやすいです」とアドバイスするところまでお伝えしていますね。

担当している求人数は、280件ほどです。一社でたくさん募集されている企業様もありますので、社数だとだいたい計120社近くだと思います。キャリプロの業務と兼務をしているので、そこまで多くはないですね。

――十分多いと思います(笑)。そもそも論なのですが、人材紹介業とはどういう職種だと思われますか?

藤野 私は「お見合いおばさん」だと思っています。転職したい人と採用したい企業の間に入って、双方の希望や条件をヒアリングし、期待値を調整していくことで、入社に繋げる仕事なんです。

転職活動をしている方って、現状に何かしらの課題や不満を抱えているから活動をしているので、精神的には必ずしも安定しているわけではないと思うんですね。まずはその方のモヤモヤや不安に感じていることは何か、理解することに努めます。そうすることで、今の環境をどう変えたいかという求職者の本音が分かるので、そこから希望や条件を確認しながら今後のキャリアを一緒に考えていきます。

もちろん求職者の意見だけで求人を紹介するわけではありません。求人企業の希望も考慮し、経営者や人事の方の観点から人材をサーチする必要もありますので、ただ横流しにする仕事では決してなく、双方が最善の選択ができるように、ご紹介をします。

なぜこの求職者が企業にマッチしているのか、この経験はこのポジションでこのように活かせる、こんなキャリアアップを考えているなど。職務経歴書だけではわからないこともたくさんあるので、その点を説明しつつ面接の機会を作り出すのもキャリアアドバイザーの重要な仕事です。

――期待値調整、難しそうですね。

藤野 そうですね。とはいえ、御用聞きになってはいけないのですが。

例えば、ご経験が浅い状態で転職される方が「もっと評価されるべきだ」と現年収300万円から200万円アップを希望されたり。

キャリアアドバイザーと求職者間で信頼関係が構築できていない段階から「それは無理です」とお伝えすると信頼してもらえなくなるし、かといって要望をそのまま聞いて絶対にマッチしていない求人にかたっぱしからご紹介すると、今度は企業から求人理解をしてくれない転職エージェントだと信頼を失くしかねません。

「まずは、できることから1つずつやっていきましょう」と傾聴しながら徐々に期待値を調整していったり、複数社選考を進めるにつれて自分のスキルの客観的評価がわかるので、その評価をもとに少しずつ本来マッチする求人に調整していきます。落ち込まれる方や、不当評価だとおっしゃる方もいるのですが、キャリアアドバイザーとして振り回されずに的確にアドバイスするように心がけています。
インタビューの様子

双方の期待値を調整するのが、大事な仕事です

――振り回されないために、どういうことが重要なのですか?

藤野 まずは転職エージェントとしてのプロ意識を持つこと。あとは「私は人材紹介をわかってる、熟知してる」という立ち居振る舞いをすること。例え経験が浅くても

――経験が浅くても。

藤野 求職者の方って、初めて話すキャリアアドバイザーに対してやはり警戒すると思うんですね。初対面の人に自分のキャリアを赤裸々に話すのですから当然だと思います。いきなり打ち解けるのは難しいですし、面接を受けている気になり本音を話せない方もいます。だから専門家として振る舞うこと、同時にカウンセリングのように相手の気持ちに寄り添うことが大切だと思います。

例えば、相手が仰ったことをそのままオウム返しをしたり。「面倒くさい」というフレーズを使われたらどこかで「面倒くさかったんですね」と同じフレーズを使って話を進めたりですね。傾聴し信頼されることは、人材紹介業の経験が浅くてもできることだと思います。

その上で、優先順位をつけること。すべての希望が通る求人はそうないので、すべてを絶対条件にするとご支援はできません。何を最優先にするか、折り合いをつけるよう促します。例えば休日はちゃんと休みたいのか、それよりも年収を上げたいのか、仕事内容は最優先なのかどうか。

あとは、現実をきちんと伝えること。「経験が全くない別業種にチャレンジするなら、年収を上げるのは難しいですよね」とか。寄り添いつつ現実をきちんと伝え、棚卸しを手伝うことを意識しています。

企業側のリクルーティングアドバイザーとしても、期待値調整は重要です。優秀な方が来て欲しいのはどの企業も同じなので、みなさん様々な条件や希望をおっしゃいます(苦笑)。「営業職で第二新卒、社員教育もできてほしいし、企画周りもお任せしたいし、採用経験もあってほしい、経理周りもお願いしたいなぁ」とか。

――それは大変(笑)。

藤野 これは極端な例ですけどね。それでいて、年収は第二新卒レベルとか。なので、「社長、そこまでデキる人がこの年収で御社を選ぶ理由ってどこにありますかね?」って。

――バッサリ言うんですね。

藤野 例えば「この会社にこういう人いますが、これぐらい年収は出せるのでしょうか? この方だけ高い年収にすると、他の社員さんとのバランスが取れなくなりトラブルの元になりませんか?長く在籍してもらえなかったら意味ないですよね?」とか。

率直に伝えて、納得いただいたうえで求人票の要件を変えていただいて、期待値調整する。求職者・採用企業の双方を調整していくのが、われわれの大事な役目だと思います。期待値調整は確かに難しいけど、楽しいですよ。

――伺ってると、ストレスはかなり大きそうですね。

藤野 あー、私はそこまで感じてはいませんが、モノを売る仕事ではないのでやっぱり大変なこともあります。求職者の方と突然連絡がつかなくなることもあったり、丁寧にすすめていても、「辞退します」の一言で終わることも。他社のエージェント経由の求人で決まったということもあれば、逆に企業側から最終フェーズで他の方に決まったので選考を終了しますとご連絡があることも。確かに体力よりもマインドの部分に負荷がかかる職種だとは思います。

それでも、自分が求職者、企業両方の条件や希望を調整することで、双方が望んだ形で内定承諾に繋げることができるのですから。私はそこをやりがいに感じていますね。 

成約したら、求職者の方は友達になるんです

――人材派遣業と人材紹介業って、どのあたりが違うんですか?

藤野 人材派遣業と人材紹介業って、隣合わせでありながらも違う職種ですね。

というのは、派遣の場合は雇用先が派遣会社です。派遣会社から一時的なアウトソーシング、という形なんですね。短期的な戦力を求める形だと思います。あらかじめ契約期間が決まっており、双方同意のもと契約を更新することもあります。働いた時給により派遣会社にフィーが支払われます。

一方、人材紹介の場合は私たちがあくまで相談や面談をし、コンサルティングを通じた上で入社していただくものです。中長期的に戦力になる方を優先しています。派遣とは異なり、入社時にオファーされた年収に応じて紹介会社に手数料が支払われます。派遣は面接はしてはいけないのに対し、紹介はしっかりと複数選考があるので、近くても違う、というのがその辺のところですね。

人材紹介が面白いなと思うのは、紹介をし無事に入社に至った後は求職者が友達になってくれることですね。

――友達に!

藤野 そうです。転職エージェントはビジネスなので、入社されるまで求職者は、売上や実績に関わる大切なお客様なんですよ。でも、紹介が終わったら関係性は人と人の繋がりになるわけで。

そうなると、入社後の状況を色々教えてくれるので、それを通じて、企業様のことにより一層詳しくなれるわけです。

そして、次にまた同じ会社に人材を紹介するときにその話を踏まえた情報を提供できますし、コンタクトし続ければ、次は違う人材を紹介してもらえたりするんですね。結果、企業の知識も増えるし、めっちゃ人脈が広がっていくんです。

さらにその方が別の会社に就職して、そこでもネットワークを広げて、また人材を紹介してもらって、、、となるので雪だるま式に連鎖していくんです。

――どんな仕事もそうかもしれないですが、成功すればするほど情報という資産が加速度的に増えていくんですね。

藤野 そうなんですよ。しかもめっちゃ感謝されますからね。転職成功した方からも、採用できた企業様からも。藤野さんのおかげでいい会社に転職できた、藤野さんのおかげで良い方を採用できたと。

すごく嬉しかったのが、元求職者の方のご家族からお礼をいただいたことですね。ご両親の介護で地元に戻らなきゃいけない方だったり、残業があまりに多いから年収を下げてでも残業の少ない会社を希望された方だったり。転職は求職者1人のためだけではなく、ご家族のためでもあるんだと。だからお見合いおばさんなんですよね。(笑)

ご自身だけでなく、ご家族にも感謝される仕事なんてなかなかないと思います。正直、たまらないですね(笑)。

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片岡良彰

大手人材企業にて、人材紹介と求人広告の営業に従事、その後人材ベンチャー企業で新卒紹介・中途紹介の両面コンサルタントを経験。
得意業界は機械系・人材系。

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