「転職を機にキャリアの充実、その後の人生を豊かにする」
働き方が大きく変化している現在、転職を“キャリアアップのきっかけ”ととらえる人も増えています。20年近く人材業界を見つめてきた人材エージェント、店舗流通ネット株式会社(TRNエージェント)の松林祐輝さんは、的確なマッチング、企業のニーズを的確に捉えた面接対策で高い内定率を誇るとともに、「コンサルティングのような面談」で求職者から高い支持を受けるキャリアアドバイザーです。今回は、先日開催された、Crowd Agent Partner Awards 2022で、クラウドエージェント年間大賞2021、成約手数料部門で1位をW受賞した松林さんに、事業成功のエピソードについて話を伺いました。
「どんな仕事が合っているのか?」は自分では気付けない?
ーー1万人と面談、2,000人 以上が内定という実績をお持ちの松林さんですが、現在のエージェントとしてのお仕事について教えてください。
基本的には第二新卒と呼ばれる、比較的若い層、求職者を中心にエージェント業、転職支援を行っています。
ーー若い人に絞っているのには何か理由があるんですか?
転職したいという人は世の中に山ほどいると思うんです。だけど、自分がなぜ転職したいのか、転職先でどんな活躍ができそうか、もっというと、どの業界がどんな仕事をしているのかを知らないという場合がほとんど。
良い悪いではなく実際そうですし、そんなこと「知らなくて当たり前」で、それで全然いいと思っているんですよ。
じゃあ知らない方々は、どんな仕事が自分に合っているのか? まずは、それを見つけるお手伝いをしたいというのがあって、まだ経験や知識の少ない若い候補者様を中心にサポートしてます。
ーー自分に合った仕事、目指すキャリアにマッチした仕事を得るためには、たしかにまず自分のことを知る必要がありますね。
新卒で100%やりたかった仕事にたどりついた、または働いてみてすぐにやりたいことが見つかった人ってほとんどいないと思うんです。
まずは新卒1社目、または2社目で働いている中で、どんな不満があって、何が違って、次はどうなりたいの? 30歳になったときにどんなことしていたいの? そういう話を聞くことがすべての始まりです。
ーーそんな松林さんに得意な業界はあるのでしょうか?
人材、IT、金融、広告、コンサルタントなどの無形商材を得意としております。有形商材と比較して、考えて提案する要素が強い商材なので、成長スピードも早くキャリアアップやキャリアパスの道も豊富に開けます。人生を逆算で考えた場合に2社目に無形商材を経験しておくことは自身の市場価値を高めることにも繋がります。
「やりたいこと」「できること」「成長できる仕事」を一緒に見つけていくための面談
ーーニーズの掘り起こしというか、本人も気が付いていない漠然とした希望や適性を引き出していきますか?
そうですね。最初の面談でのヒアリングは短めにして、ちょっとでも興味がありそうな業界、会社、仕事については、具体的にこんな求人があって、企業の規模感はこんな感じで、業界の特徴はこうで・・・とできる限り詳細を説明します。
また求職者様が気になった企業に対しては、その会社で働く現役社員からのクローズな情報等もお伝えしています。これは、自分が転職をお世話した方が実際に働いているから出来る独自のサービスだと思います。そういう話をしていく中で、キャリアの指向性というか、その人の希望だけでなく、適正などもわかってきて、応募する企業を一緒に詰めていく感じです。
そうやってエージェントじゃないと教えてあげられない情報をもとに、キャリアの方向性を固めていき、そこからはやっぱり大切なのは面接対策ですね。
過去の例で話すと、新卒でスポーツジムのインストラクター職に従事している方がいらっしゃいました。人材業界の営業職へのキャリアチェンジを希望しておりましたが、他社エージェントで書類選考が通過しない、とご相談をいただきました。たしかに彼自身は営業職の経験もないし、売り上げの目標を持っているわけでもない。でも話をしていくと、ジムで教えているお客さん一人ひとりに対して、ものすごく高い売り上げ意識を持っていることがわかってきたんですね。
「500人の会員の名前と顔を全部覚えました」
「それはすごいですね。何のために覚えたんですか?」
その彼は、ジムに来てくれるお客さんに2回、3回と足を運んでもらうためには、インストラクターがどういう接し方をするのかが大切だと思っている。会員の満足度を上げて、通う頻度を上げる、ナイト会員だった人が休日の昼間にも顔を出してくれるようにすることで、滞在時間が上がる。そんなことを考えて仕事をしていると話してくれたんです。
ーー自分では目の前の仕事のためだと思っていたことが「営業」に通じる行動だった?
スポーツジムは会員の維持が命綱で、そういう観点でみればインストラクターが会員に接する機会は大切な「営業」ですよね。外から指摘されて初めて気が付く。話しているうちに、自分の得意なこと、武器はこれだと思えるということが見つかることはたくさんあります。
ーー自分の仕事に必要だからやっていたはずのことでも、自分なりに考えて工夫したことにはその人のセンスや才能、可能性が隠されていることもありますもんね。
本人たちは”手段”にしか目が行っていないんですけど、何のためにという“目的”に立ち返ると、新しい発見があってどんどん気づきが始まる。そもそも転職に際して、完璧なキャリアを持ち合わせている人なんてほんの一握りです。
営業がやりたいけど、営業経験がないという相談はよく受けますが、営業職での経験がなくても営業にかかわることをしている、これまでのキャリアの中でそのセンスを身に着けていることも珍しくないというわけです。結果、こちらの求職者様は第一志望の大手人材会社で、念願のキャリアアドバイザー職として働いていらっしゃいます。
企業のニーズと、求職者の中にあるエピソードと“潜在的な可能性”をマッチングさせる
ーー面接はたしかに転職活動をしていく上で重要なポイントですし、悩んでいる人も多いですよね。エージェントならではの対策でいうと、どんな対策をしていくんですか?
ジムインストラクターの方の話でいうと、努力はしたけど、やっぱり離脱率はなかなか下がらなかった。それはなんでだろうね? という話から、「自分が目立ちたがり屋で、結局は会員ではなくて、自分のことを見ていた気がする」という反省が出てきたんですね。そういう経験って今後のキャリアにとってすごくいいことだと思っているんです。面接は、条件ではなくて”人間性”を伝える場だと思っているんです。スペックは書類上でわかることも多いけど、最終的な判断は色々質問して話を聞きたいという企業が多いから面接という方法がずっととられているわけです。
なので、キャリアアドバイスの段階では失敗談であっても、人間性が見えるようなエピソードはとても重要なんですね。そこから紐解いていく。
ーー求人でいえば、企業側の「こんな人が欲しい」というニーズを把握することも重要です。そこに合わせたニーズの掘り起こし、面接指導もありそうですよね。
新卒の就職は、ある意味で内向的な自己分析の世界。社会人になってからは他者からの客観評価に変わるんですね。エージェントからすれば、企業が求めている人材像はかなり高い確度で把握しているわけです。なので、自分が担当する求職者がどのポジションにいるか、どこを伸ばしていけばその人材像に近づけるかはわかっているんですね。
泥臭い営業で、現場で頑張れる人材を探している企業に対して、ビジョンへの共感や働きがいだけをアピールしてもやっぱり難しい。泥臭さを感じさせるような経験やエピソードがあれば、それを引き出して、面接でもそこを必ず入れていくように一緒に方向性をつくっていく感じですよね。
そのため、私の場合は面談がかなり重要ですね。求職者さんの特徴、強み、武器はどこにあるんだろうなって。ご本人は気づいていないことの方が多いんですよ。
自分なら力になれると確信を持てた方だけにスカウトメールを送ります
ーーキャリアアドバイザーとしては、一人に時間をかけるより人数をこなした方が利益率が上がるという考えもあると思いますが?
やっぱりどれだけ経験を積んでも求職者全員の力になることは出来ないですし、自分が忙しくなりすぎると担当している求職者様にも迷惑をかけてしまいます。そのため私は無差別の転職相談フォーム経由では対応していないです。求職者様のキャリアや年齢・希望職種や業界などを拝見し、自分なら力になれると確信を持てた方だけにスカウトメールを送るようにしております。マイナビやリクナビに毎日登録される約5000名近くの求職者様のレジュメに目を通し、その中から50名ほどの方にスカウトメールを送らせてもらっています。あとはリファラルの方だけを担当するようにしております。
このように担当させていただく求職者様の数を絞ることで、求職者様の希望に合わせた面談や面接時間をスムーズに組むことが出来ます。また転職活動は1人きりで考え込むと不安になるもの。LINEのご返信などは5分以内をモットーにしております。
ーーそもそも希望職種、業界に向いていない場合は早めにそれを伝えることもありますか?
全然合っていないなと思えば、それは正直に伝えします。でも合っていないかどうかも面談してみないとわからないし、求職者の方も具体的な求人票を見て、どんな条件でどんなことをするのかがわからないと合っているかどうかも判断できませんよね。だから、とにかくこちらの持っている情報はどんどん出して、知ってもらうことは積極的にやりますね。
ーーとにかく話を聞いてみないとわからないと?
最初は「なんとなく転職したい」で全然いいんです。転職に対して、漠然と「安定した職業がいい」という人がいてもいい。でも、なぜ安定した職業がいいと思うのか、その人の求める安定とはどんなものなのか? それを聞いていくと、ちゃんと深い理由があったり、安易に発言しているわけじゃないということもあるんです。
ーー面談を経て成長をしていく。松林さんの転職サポートは、キャリアアドバイスというか、コンサルティングに近いですね。
エージェントをやっていると、転職を機に「まだここにない自身と出会ってほしい」という思いが出てくるんです。それもあって20代が多い第二新卒の求職者をメインにしているんですけど、この仕事に出会えて、転職して3年後にはこの人は別人のよう変わってすごく成長しているんだろうなと思うとそこにモチベーションを感じるのはありますね。
ーーそこが高い内定率にもつながっているのかなと思います。
転職エージェントは、ある意味で仕事を通じて人生を変えちゃう魔法使いみたいなもんだと思っているんですよ。人材業界には長くいますが、エージェントを始めて成長していく求職者に寄り添うようになって「この仕事が一番好きだな」と思えているんです。
内定率を一定水準に持っていくためには、第一志望群の各企業の内定タイミングを揃えないと転職活動は成功しないと思います。
多くの企業の場合、いざ内定を受け取ると、承諾可否までの期間が約1週間程度と、短く設定されます。中途採用においては、内定が出ないと、自分の給与や年収を知ることが出来ません。そのため、各社の内定出しのタイミングが少しズレてしまうと、「もう1社からまだ返事が来ていないけど、どうしよう!?もし落ちていたら心配だからここで決めてしまおうか」など、後ろ向きな選択を迫られることにもなります。そのため、私は各社の内定タイミングを揃えて、求職者様が後悔のないように、しっかり各社の最終条件を見比べて、最終選択できる環境を用意させていただきます。
企業によって、合格通知のタイミングは様々です。最終面接当日の企業もあれば、1週間ほど要する企業もございます。内定タイミングを揃えることは、企業の選考の特徴を理解しているエージェントでなければ、現実的に難しいと私は考えております。給与交渉も求職者様の代理人である私が全力でおこなっています。ご年齢やキャリアにもよりますが、年収100万円〜250万円アップを最低目標にしております!
人間は1日8時間も仕事をしているんです。人生の大半を占めている仕事時間をどう過ごすかによって、人生は変わっていくし、成長もある。
正直、内定を取るためのテクニックを教えるとか、企業ニーズに合わせた人材を送り込んでいくだけなら、もっと担当する求職者を増やしてという考え方もありますが、それだと可能性があるのに悩んでいる人、潜在的なマッチングを見逃していることになるんじゃないかと思っているんです。仕事を紹介して終わりじゃないところ、その人のその後の人生に興味がある自分としては、今の仕事に何か違和感がある、不満でもいいですし、もっとこうしたいということでも良い、「変わりたい」という人にどんどん相談してほしいと思っています。
ーー貴重なお話をありがとうございました。
ライター:大塚一樹
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