「人材斡旋(あっせん)とは何か?」「人材紹介との違いは?」「派遣とはどう違うの?」
人材業界に携わっていても、この3つの言葉の境界があいまいなまま使われていることが多く、検索でも「人材斡旋 紹介 違い」「斡旋 派遣 違い」などのキーワードが常に一定量検索されています。
実際、人材紹介会社・転職エージェント・営業担当者が顧客に説明する際も、「斡旋=紹介なのか」「紹介と紹介事業はどう違う?」「派遣とは何が違う?」といった点を正確に理解しておくことは極めて重要です。
この記事では、職業安定法に基づく定義から、現場での使い分け、企業との契約書との関係、法律上の注意点、さらに人材派遣との違いまで、“業界の実務で本当に役立つレベル” でわかりやすく解説します。
- 人材斡旋(あっせん)とは?まず結論から!
- 人材斡旋の法的な意味─職業安定法でどう定義されている?
- 人材紹介との違いとは
- 人材派遣との違いとは
- 具体的な流れ
- 人材斡旋業務の種類と範囲
- 斡旋における契約・ルール・リスク
- 人材斡旋のビジネスモデル─収益はどう生まれる?
- 市場規模と将来性
- 求職者・企業にとっての「メリット・デメリット」
- 斡旋力を高めるための具体的施策
- まとめ
人材斡旋(あっせん)とは?まず結論から!
人材斡旋(あっせん)とは、求職者と企業の間に入り、雇用成立を仲介する“行為”のことです。事業ではなく、あくまで紹介・推薦・調整といった実務行為そのものを指します。
つまり、人材紹介会社(転職エージェント)が日々行っている下記一連の仲介行為をまとめた概念が“斡旋”です。
- 求人の紹介
- 求職者の推薦
- 面接日程の調整
- 条件のすり合わせ
ここで最も重要なポイントは 「斡旋=行為、紹介=事業」 という構造です。人材紹介事業は、この斡旋行為を体系的に提供するビジネスモデルのことであり、斡旋そのものと同義ではありません。
ただ、「斡旋」という言葉は行政・法律文書で多く使われる一方、現場ではあまり使われないため、求職者・企業ともに意味がつかみにくく誤解されやすいという特徴があります。現場での表現は「ご紹介します」「推薦します」が一般的で、“斡旋”はやや硬い印象があるためです。
本記事では、この誤解されやすい言葉である「斡旋」について、まずは“行為の名前である”という結論を押さえたうえで、続く章で法的定義・人材紹介との違い・派遣との違いを順番に整理していきます。
人材斡旋の法的な意味─職業安定法でどう定義されている?
人材斡旋をもっとも正確に理解するためには、まず「職業安定法」における定義を押さえる必要があります。業界では“紹介”や“推薦”といった日常用語が使われることが多いものの、法律の世界ではこれら一連の行為を『雇用関係の成立を斡旋(あっせん)すること』と定めています。この“斡旋(あっせん)”こそが、法令上の「人材斡旋」の原点です。
職業安定法第4条第1項では、職業紹介を次のように定義しています。
>求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者の間における雇用関係の成立をあっせんすること。
この条文から読み取れる重要ポイントは3つあります。
- 職業紹介は「求人の申込み」と「求職の申込み」を受けることから始まる:紹介会社が行う求人要件のヒアリングや、求職者からの登録・面談も、斡旋行為の前提に含まれます。
- 斡旋とは、雇用関係が成立するように「取り持つ行為」そのものを指す:求人紹介、推薦、面接日程の調整、条件のすり合わせなど、雇用成立に向けた一連の調整行為が該当します。
- 斡旋の目的は「雇用関係の成立」であり、単なる情報提供とは区別される:企業に候補者情報を提供するだけであっても、その行為が採用に影響した場合、斡旋に該当すると解釈される余地があります。
この定義を踏まえると、次に理解しておくべきなのが 「斡旋行為を誰が、どの条件で行えるのか」 という点です。
職業安定法では、報酬を得て斡旋を行う場合にのみ、厳格なルールを設けており、重要になるのが有料職業紹介事業の許認可制度です。有料職業紹介事業を行う場合は、免許が必要となります。厚生労働省の許認可を受けずに、免許がない状態で報酬を得て斡旋行為を行うことは職業安定法違反となります。たとえば、副業や知人紹介の形で成功報酬を受け取る行為は、状況によっては「無許可の職業紹介」とみなされる可能性があり、法的リスクが極めて高い領域です。この点からも、人材斡旋は「誰でも気軽に行える仲介」ではなく、法律に基づいて管理される専門的な業務であることが分かります。
一方で、すべての職業紹介が許認可を必要とするわけではありません。自治体や大学のキャリアセンター、ハローワークなどが行う「無料職業紹介事業」は、報酬を受け取らないことを前提に認められています。重要なのは、有料・無料の違いはあっても、法律上の「あっせん」という行為の意味自体は変わらないという点です。
つまり、人材斡旋という言葉の背景には、「求人と求職を基に雇用関係の成立を取り持つ行為を、適切な許可とルールのもとで行う」という明確な法律上の枠組みがあります。実務を担う人材紹介会社にとって、この“法的な斡旋の概念”を理解することは、自身の業務内容を正しく説明し、信頼を得るための前提条件と言えるでしょう。
人材紹介との違いとは
前述の通り、斡旋は個々の「行為」を指す言葉であり、人材紹介はその行為を事業として提供する仕組みを指します。
人材紹介会社や転職エージェントは、斡旋という行為を継続的・有償で行うことで職業紹介事業を営んでいます。企業との契約や紹介手数料の設定などは、この「事業」としての人材紹介に紐づくものです。
一方で、斡旋という言葉自体は、日常の実務ではほとんど使われません。現場では「求人をご紹介します」「候補者を推薦します」といった表現が一般的であるため、斡旋と人材紹介が同義のように受け取られがちです。
しかし、法律上は人材紹介事業を構成する中核的な行為が斡旋であり、事業名と行為名を区別して理解することで、用語の混乱は解消されます。
この整理を押さえておくと、契約書やサービス説明においても、人材紹介の範囲や責任の所在を正確に説明できるようになります。
人材派遣との違いとは
斡旋は人材紹介に固有の行為であり、人材派遣とは制度上も法的にも直接の関係はありません。
斡旋とは、求職者と企業の間に入り、新たに雇用関係が成立するよう取り持つ行為を指します。これは職業安定法に基づく概念で、人材紹介(職業紹介事業)の中核となる行為です。
一方、人材派遣では、労働者と雇用契約を結んでいるのは派遣会社であり、派遣先企業と労働者の間に雇用関係は成立しません。そのため、人材派遣は「雇用関係の成立を取り持つ行為」である斡旋には該当せず、労働者派遣法に基づく別の制度として整理されます。
実務上は、派遣でも人材のマッチングや条件調整が行われるため、斡旋と似た印象を持たれがちです。しかし、法律上は「雇用関係を成立させるかどうか」という一点で明確に区別されます。
この違いを理解しておくことで、人材紹介と人材派遣の役割を正確に説明でき、企業・求職者双方との認識のズレを防ぐことができます。
具体的な流れ
結論から言うと、人材斡旋は「求職者側」と「企業側」のプロセスを同時並行で進め、最終的に双方の合意をつくる仕事です。どちらか一方だけを見ていては成立しません。
まず、求職者側では以下の流れで進みます。
① キャリア状況のヒアリング
② 求人紹介・マッチング
③ 推薦文作成・応募
④ 面接日程調整・選考フォロー
⑤ 内定後の条件調整・入社フォロー
一方、企業側では次のプロセスが並行して進みます。
① 採用要件のヒアリング
② 求人要件の整理
③ 推薦者の選考
④ 内定判断・条件提示
エージェントの役割は、この2つの流れを“別々に動かすこと”ではありません。 求職者の意向と、企業の採用背景を行き来しながら翻訳・調整し、ズレを解消していくことが斡旋の本質です。
特に内定前後は、条件・不安・期待が交錯しやすく、エージェントの介在価値が最も高まる工程です。
人材斡旋業務の種類と範囲
結論から言うと、斡旋業務は「求人を紹介すること」だけではありません。求職者・企業双方の意思決定を支援し、雇用成立まで導く一連の専門行為です。
まず、求職者側を担うのがキャリアアドバイザー(CA)です。CAはキャリア整理、求人提案、推薦文作成、選考対策などを通じて、求職者が納得して意思決定できる状態をつくります。
一方、企業側を担うのがリクルーティングアドバイザー(RA)です。採用要件の整理、ターゲット設定、求人票設計などを行い、「どんな人を採るべきか」を言語化します。
両面型エージェントの場合は、このCA・RAの役割を一人で担い、情報の行き違いを最小限に抑えることで、スピードと精度を高めます。
非公開求人や独占求人では、こうした情報整理力と推薦設計力が特に重要になります。この点からも、斡旋とは単なる“紹介作業”ではなく、判断と調整の連続であることが分かります。
斡旋における契約・ルール・リスク
人材斡旋は、求職者と企業を結びつける行為であると同時に、契約・ルール・法的リスクが密接に関わる業務でもあります。人材紹介会社が斡旋を行う際に必ず理解しておくべきなのが、紹介手数料、返金規定、オーナーシップ、みなし紹介、二重応募などの実務上の注意点です。ここでは、トラブルを防ぎ、適正な斡旋を行うために重要なポイントを整理します。
紹介手数料
まず、企業との契約書で最も重視されるのが紹介手数料(成功報酬)です。一般的には「年収×料率(20〜35%)」で計算され、採用決定時に企業から紹介会社へ支払われます。ここで注意すべきなのは、「採用決定の定義」と「手数料発生のタイミング」が企業ごとに異なる点です。内定承諾時と入社日に発生タイミングを分けている企業もあり、契約書での齟齬がトラブルの原因になりやすいため、明確な確認が不可欠です。
返金規定
次に重要なのが、返金規定(返戻規定)です。これは、入社後に短期離職が発生した場合、紹介会社が手数料の一部を返金する制度です。通常は、入社後1か月以内で100%返金、2か月以内で50%返金など段階的に設定されます。返金規定は紹介会社にとって収益リスクが大きいため、推薦前に求職者の本音や転職理由を深く理解し、定着見込みを判断することが極めて重要です。
オーナーシップ(帰属)
さらに実務で注意すべきなのがオーナーシップ(帰属)条項です。これは「この候補者はどの紹介会社経由の応募として扱うか」を定めるルールで、6か月〜1年程度の帰属期間を設定している企業が一般的です。候補者が他経路で応募した場合の扱いや、複数社が同じ候補者を推薦した場合の優先順位など、オーナーシップの定義が曖昧だと紹介料の請求トラブルが起きやすくなります。
みなし紹介
似た概念として、みなし紹介(擬制紹介) があります。これは、エージェントが“推薦したと明言していない”場合でも、企業へ情報提供を行った結果、その情報が採用に影響したと判断された際に「紹介行為を行った」とみなされるケースです。たとえば、選考相談の文脈で候補者情報を送ってしまったり、企業側がその情報を基に直接コンタクトを取る場合、みなし紹介となり得ます。慎重な情報管理が求められます。
二重応募
また、二重応募(ダブルエントリー)も斡旋業務では頻出するリスクです。候補者が複数のエージェントを利用している場合、同じ企業へ別経路で応募が出てしまうことがあります。この場合、企業は不信感を抱き、候補者にも紹介会社にも不利益が生じやすいため、推薦前の応募状況確認と、候補者への丁寧な説明が欠かせません。
さらに、職業安定法に抵触するコンプライアンス上のリスクも理解しておく必要があります。虚偽の経歴で推薦する行為や、企業の採用判断に不当に影響を与える行為、求職者の同意を得ない情報提供などは違法とされ、行政指導の対象となります。斡旋行為は法律の枠組みの中で行われるため、コンプライアンス違反は紹介会社の信頼に大きく影響します。
このように、人材斡旋には契約と法的ルールが密接に関わっており、適切な理解なしに行うとトラブルや損失につながります。斡旋の質は“契約理解の深さ”にも左右されることを忘れてはなりません。
人材斡旋のビジネスモデル─収益はどう生まれる?
人材斡旋は、企業と求職者の間に立ってマッチングを実現する“行為”ですが、人材紹介会社として事業として成立させるには、明確なビジネスモデルが必要です。人材紹介会社の収益構造はシンプルに見えて、実は複数の要素によって成立しており、業界理解を深めるためにはその仕組みを正しく理解しておくことが欠かせません。
最も基本となるのが、成功報酬型の「紹介手数料」です。企業が採用に成功した時点でのみ費用が発生する方式で、金額は候補者の年収に一定の料率をかけて算出します(具体的な料率や定義は前章で触れた通りです)。この成功報酬モデルは企業にとってリスクが少なく、成果に対して費用を支払いたいというニーズと非常に相性が良いため、人材紹介事業が成長しやすい要因にもなっています。
ただし、「成功報酬=単純に決まれば売上になる」というわけではありません。人材紹介会社の実務では、候補者のスクリーニング、RA/CAの分業体制、両面型エージェントの調整業務、採用難易度に応じた稼働量など、決定までのプロセスに多くの工数がかかっています。そのため、紹介手数料が事業として成立するには、マッチング精度と生産性のバランスが極めて重要です。
また、成功報酬型以外にもいくつかの収益モデルが存在します。たとえば、最低手数料(ミニマムフィー)を設定するケースでは、年収が低いポジションでも一定額の手数料が保証されるため、紹介会社側の収益が安定しやすくなります。採用難易度が高いポジションでは、あらかじめ企業と“リテーナーフィー(着手金)”を取り決めてからサーチを開始する方式もあり、ハイクラス領域やエグゼクティブサーチでは一般的な手法です。
さらに、事業としての収益性を考えるうえでは、決定率(成約率)と平均手数料額(ARPU)が事業成長の鍵を握ります。紹介会社は求人を多く持てば良いわけではなく、どれだけ“決まる求人”に注力できるか、また“決まりやすい候補者”を見極められるかが収益を大きく左右します。ここにデータ活用やCRMの運用が重要になる理由があります。
人材斡旋のビジネスモデルは、成功報酬型という単純な見た目以上に、候補者の質・企業の採用力・エージェントの調整力といった多くの要因が絡んで成立しています。これらの理解は、紹介会社の戦略設計や案件選定においても不可欠な視点です。
市場規模と将来性
結論から言うと、人材斡旋(人材紹介)市場は、規模・参入企業ともに拡大が続く成長市場です。
国内の人材関連ビジネスは複数領域にまたがりますが、矢野経済研究所の調査では、主要3業界(人材派遣・ホワイトカラー職種の人材紹介・再就職支援)の市場規模が2024年度で9兆7,962億円とされています。
また、人材紹介(有料職業紹介)に関しては、厚生労働省の公表資料で令和5年度の手数料収入総額が約8,362億円となっており、近年は数千億円規模を大きく上回る水準で推移しています。
参考:矢野経済研究所 人材ビジネス市場に関する調査を実施(2025年)
調査機関や算定方法によって数値に幅はあるものの、2009年以降、景気変動の影響を受けながらも市場全体として拡大傾向にある点は共通しています。
この成長を支えている最大の要因が、慢性的な採用難です。特にITエンジニア、DX人材、専門職、バックオフィス系の即戦力人材は、求人広告だけでは母集団形成が難しく、企業側が「待ちの採用」から「探しにいく採用」へ移行しています。その中で、候補者に直接アプローチし、選考を伴走する人材斡旋の価値が高まっています。
また、20代〜30代を中心に転職が一般化したことも市場の追い風です。多くの求職者が一度は転職エージェントを利用した経験を持ち、「斡旋サービスを使うことが特別ではない」という認識が定着しつつあります。企業側も、求人広告やダイレクトリクルーティングと並行して、人材紹介を採用チャネルの一つとして組み込むケースが一般的になっています。
さらに、派遣会社や求人広告会社が人材紹介事業へ参入する動きも加速しています。派遣市場は規模が大きい一方で利益率が低く、収益性の高い紹介事業を組み合わせることで事業ポートフォリオを強化する狙いがあります。成果報酬型である人材紹介は、固定費リスクが比較的低く、景気変動の影響を受けにくい点も参入が進む理由です。
将来性の面では、AIやデータ活用によってマッチング効率が高まる一方、エージェントの介在価値はむしろ重要性を増すと考えられます。求職者のキャリア背景を整理し、企業の採用事情を踏まえた条件調整や辞退防止を行うといった領域は、今後も人の判断が不可欠だからです。
総じて、人材派遣と比べると市場規模自体は小さいものの、成長率の高さと参入プレイヤーの増加が続く分野です。人材紹介会社にとっては、引き続き拡大余地の大きい市場と言えるでしょう。
求職者・企業にとっての「メリット・デメリット」
人材斡旋は、求職者と企業の双方にとって大きな価値を生むサービスですが、一方で限界やデメリットも存在します。ここでは、斡旋のメリット・デメリットをそれぞれの立場から整理し、斡旋という仕組みがどのような側面を持つのかを明確にします。
まず求職者側のメリットとして大きいのは、非公開求人や独自ルートの求人にアクセスできる点です。一般公開されていないポジションは紹介経由でしか応募できないことが多く、斡旋を利用することで選択肢が広がります。また、書類添削や面接対策、給与交渉の代行など、単独で転職活動を行う場合には得られないサポートを受けられるのも大きな利点です。さらに、企業の内部事情や選考のクセを把握しているエージェントが伴走することで、ミスマッチが減り、より効率的な転職活動が可能になります。
一方で、求職者にとってのデメリットも存在します。代表的なのは、担当者の質に左右されやすい点です。斡旋の中心にはエージェントの判断や情報整理があるため、担当者の経験やコミュニケーション力によって満足度が大きく変わります。また、紹介会社の紹介可能求人はその会社が保有する案件に限定されるため、“求人の幅が限定される”という制約もあります。さらに、紹介会社の都合やフィー構造によっては、求職者の本意とは異なる求人を強く勧められるケースがあるなど、情報の非対称性に起因するデメリットも指摘されています。
企業側のメリットとしては、採用効率の大幅向上が挙げられます。斡旋では候補者の事前スクリーニングが行われ、企業が接点を持つのは“一定の基準を満たした候補者”に絞られるため、採用担当者の負担軽減につながります。また、選考プロセスの改善提案や市場情報の提供を通じて、採用戦略そのものがブラッシュアップされるケースも多くあります。特に採用経験の少ない企業や成長フェーズの企業にとっては、斡旋が“採用の外部パートナー”として機能します。
企業にとってのデメリットは、採用コストの高さです。成功報酬型とはいえ、年収の20〜35%という手数料は決して小さくありません。また、紹介会社に依存しすぎると自社採用力が育ちにくくなる点も課題です。さらに、複数の紹介会社を併用することで情報管理が複雑になり、候補者のダブルエントリーなどのトラブルにつながるリスクもあります。
このように、斡旋は求職者・企業双方に価値を提供する一方で、一定のデメリットも抱えています。これらを正しく理解することが、斡旋サービスを適切に活用するための第一歩です。
斡旋力を高めるための具体的施策
人材斡旋は、単に求人を紹介して候補者を推薦するだけの業務ではありません。求職者・企業双方の状況を深く理解し、最適な意思決定に導く高度な専門行為です。そのため、紹介会社として成果を高めるには、斡旋の質そのものを向上させるための明確な施策が必要です。ここでは、現場で効果が大きい“実務レベルの改善ポイント”を整理します。
まず重要なのは、スクリーニング精度の向上です。候補者の経験・スキルだけでなく、価値観、働き方の好み、キャリアの優先順位など、非言語情報を丁寧に読み解く力が求められます。特にミスマッチの多くは志向性のズレから起こるため、面談時に深掘りすべき質問の設計や、回答から意図を読み取る力が斡旋力の核になります。
次に、RAが担当する企業側では、求人票ヒアリングの深度を高めることが欠かせません。企業が言語化している要件は、実際のニーズの一部に過ぎません。現場の課題、チーム構成、期待する成果、過去の採用成功・失敗例、代替案の有無など、“採用の背景情報”を理解することで、より的確な推薦が可能になります。また、この情報があるかどうかで、CAが求職者へ伝える説得力が大きく変わり、応募意欲にも直結します。
さらに、両面型でも分業型でも重要になるのが、CAとRAの連携の質です。候補者の志向性と企業の採用背景を正しく共有し、推薦時に矛盾がない状態をつくることで、推薦の通過率が大幅に向上します。SlackやCRMでの情報共有を「記録のため」でなく「意思決定を助けるため」に行う意識が、斡旋の成功率を押し上げます。
また、推薦文の質の改善も大きな効果があります。推薦文は候補者の魅力を言語化し、企業が“会ってみたい”と思うかどうかを左右します。事実を羅列するだけでなく、企業の採用背景に紐づけてストーリーとして提示できると、書類通過率が飛躍的に上がります。
最後に、入社後フォローの強化も斡旋力の一部です。早期離職は企業・候補者・紹介会社すべてにとって損失であり、フォローによって課題を早期発見できれば、定着率が向上します。企業からの信頼も高まり、継続的な取引につながる重要な施策です。
斡旋力を高めるとは、単に“案件を増やす”“候補者を増やす”ことではなく、求職者と企業の意思決定を最大化し、成功確率を引き上げるプロセスを磨くことに他なりません。
まとめ
人材斡旋(あっせん)とは、求職者と企業の間に入り、雇用成立を支援する仲介行為です。転職エージェントが日々行う紹介・推薦・調整・フォローといった一連の行動はすべて斡旋に含まれており、この“行為としての斡旋”を体系的に提供するのが人材紹介事業です。
斡旋は、法律上の明確な定義に基づく専門的業務である一方、派遣とは契約構造や働き方が根本的に異なります。また、実務上は紹介手数料や返金規定、候補者の帰属など、契約やルールに関わるリスクも多く存在します。斡旋とその周辺概念を正しく理解することは、エージェントの信頼性を高めるうえで欠かせません。
市場としても人材紹介は成長が続いており、求職者・企業双方への価値も高まっています。斡旋力を磨くことは、紹介会社の成果を大きく左右する要素です。正確な知識と高い実務品質によって、ミスマッチのない採用・転職の実現が可能になります。
















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