「紹介した人材がなかなか定着しない」という悩みや、「企業側がもつ採用課題を把握して営業に活かしたい」といった考えは、人材紹介をおこなうなら一度は持ったことがあるでしょう。
雇用保険法の改正や新型コロナウイルスの流行により、採用市場にはさまざまな影響が現れています。採用市場の動向をふまえ、企業の採用課題を理解しておくことは、より適切な人材紹介に役立ちます。
この記事では、近年の採用市場の動向や、企業が抱える採用課題、課題にアプローチする方法を解説します。
採用市場の動向
近年の採用市場の動向として、コロナ禍による影響と、雇用保険法の改正に伴う中途採用市場の変更の2点を見てみましょう。
中途採用市場の変化
2021年4月に改正が行われた雇用保険法の影響により、今後の中途採用市場に変化が起きる可能性が高まりました。改正が行われたのは、次の2点です。
- 高年齢者雇用確保措置を講ずることを企業の努力義務にする
- 大企業に対し中途採用比率の公表を義務付ける
まず、高年齢者雇用確保措置とは、70歳までの高齢者の就職を支援するため企業努力を求めるものです。企業側は、定年の引き上げや継続雇用制度の導入、定年の廃止などの措置をおこなうことが必要です。
また、常時雇用する労働者が301名以上の企業に対し、中途採用比率の公表が義務付けられました。これにより、中途採用に対する企業の姿勢がわかるため、中途採用を目指す転職者とのマッチング精度が高くなり、より転職しやすくなると考えられています。
しかし、転職しやすいスキルや資格がある場合は有利になる一方、そうでない場合には転職するのが難しくなる面があるともいわれています。
学生のキャリア観の変化
新型コロナウイルスが流行したことに伴い、働く場所を自分で選べるリモートワークの普及などを通じ、学生のキャリア観にも変化が起きています。
マイナビが行った「マイナビ 2024年卒大学生就職意識調査」によると、回答した41,197名のうち、企業選択のポイントは「安定している」が48.8%と最も高く、前年よりも4.9pt上昇していることが分かりました。
また、株式会社学情の行った「選考参加」に関するアンケートによると、選考参加者数が「10社以下」となった学生が82.1%を超えています。あわせて、志望度の高い企業であるほど接点を多く持つようにし、企業理解を深めたいと考えている学生が多いことが分かりました。
先行きの見えない状況において、経営の安定した会社を厳選したうえで選考に参加したいと考える学生が増えているようです。
企業が抱える採用課題とは?
変動する採用市場において、企業はさまざまな採用課題を抱えています。人事予算に関する課題もあれば、そもそも応募者が少ないといった課題もあります。
ここでは、企業が抱える7つの採用課題を詳しく解説します。
①応募が少ない・多い
応募者の集まりを母集団と呼びますが、母集団が多すぎても少なすぎても、採用に至るまでが難しくなります。
- 採用候補者の母集団が小さい=選考そのものが実施できない
- 採用候補者の母集団が大きい=自社に合う求職者を見つけるには多くの時間がかかる
母集団の人数による課題を解決するためには、自社が求めるスキルや条件を明確に絞り込みつつ、採用目標に適した手段を検討することが大切です。
たとえば、「4月までに中途採用の社員を3名増やす」という採用目標があったとします。そのためには、何人から内定を承諾してもらえばよいのか、さらにそのためには面接をどのくらいおこなえばよいのかを逆算していくことで、どういった募集をおこなえばよいのか計画を練ることができ、応募が少ない・多いという課題に対応しやすくなります。
②内定辞退率が高い
採用に至るまで時間と予算をかけても、内定辞退が起きてしまうことがあります。すると、それまでにかけた時間も予算も、すべてゼロに戻ってしまいます。
中途採用でも新卒採用でも、内定が決まってから採用候補者が企業の状況を見直した結果、内定辞退が起きるケースがあります。「別の会社から、よりよい条件を示された」「入職後の生活に不安が生じた」など、理由はさまざまです。
内定辞退率を下げるには、内定後に企業がどのようなアプローチをおこなうかが重要です。入職までに定期的に連絡を取ったり、信頼関係を築くための懇親会を開いたり、綿密なコミュニケーションで不安を軽減させていきましょう。
③活躍できる人材を見定めるのが難しい
採用担当者が良い人材だと思って採用しても、現場で活躍できる人材かどうかは働いてもらうまでわかりません。人材を見定めるには、現場が求める人材の条件を明確にするとともに、採用候補者が企業に求めている条件もヒアリングしておくことが大切です。
これは、もし自社が採用候補者から見て合わない条件だった場合、採用したとしても辞退される可能性が高まるためです。辞退されてしまうと、結果として採用担当者と現場、双方に負担がかかってしまうでしょう。
人材の見定めができるように、現場と採用候補者双方、コミュニケーションを欠かさないことが大切です。
④入社後の定着率が低い
入社後の対応は、「定着率」に影響を及ぼします。入社前と入社後のギャップが大きくなれば、早期離職にもつながります。
入社前と入社後のギャップが生まれ、定着率に影響が及ぶ原因として、次の4つが考えられます。
- 企業のネガティブな面を伝えていない
- 企業の風土や文化を伝えていない
- 現場が忙しくフォロー体制がない
- 採用者の得意分野を理解できていない
企業のネガティブな面や風土が正しく伝わっていないと、採用候補者は企業の良い面や断片的な情報のみで判断することになります。結果として、入社前後のギャップを感じやすくなってしまうでしょう。
また、現場が忙しくてフォロー体制がない状態だと、採用者の得意分野を理解できず、不得意な分野に配属してしまう可能性があります。結果として早期離職にもつながりかねません。
事前にネガティブな面も含めて情報提供をおこなうとともに、研修期間や入社後のフォロー体制を充実させて、定着率を高める工夫をしましょう。
⑤狙った人材の応募が来ない
狙った人材から応募がない場合は、ターゲットとする人材に「あなたを求めていますよ」ということが伝わるように、応募資格や求人情報を見直す必要があります。
たとえば、20代の若手を求めているのに、応募条件に10年以上の経験が必要なスキルを含めていたとすれば、年齢層の高い応募者が増えてしまうかもしれません。
ターゲットとなる人材が応募しづらくなっていないか、改めて見直してみましょう。
⑥現場レベルの面接で通過ができない
書類審査や一次面接は通過しても、二次面接などが通らない場合、人事が求める人材と現場が求める人材で、ミスマッチが起きている可能性があります。
まず、現場では何に困っているのか、どのような人材が必要なのかといった具体的なターゲットを洗い直しましょう。状況によっては「今すぐ採用ではなく、採用予算を来年に回したほうがいい」という場合や「中途採用ではなくアウトソースを行う」といった手段の方が合っている可能性もあります。
そのうえで、採用したい人材の条件を具体的に挙げ、採用活動をおこなっていきましょう。
採用課題を解決する5つの対策方法
採用課題を解決するための対策を怠ると、内定辞退率の上昇や定着率の低下が進む恐れがあります。自社に人材を集めるためにも、採用課題を明らかにして、対策を練ることが大切です。
ここでは、採用課題を解決するために取り組みたい5つの対策方法を解説します。
①ターゲットを明確にする
欲しい人材は、どのようなスキルを持ったどのような人材なのか、まずは具体的に掘り下げていきましょう。社内でも分かりやすい言葉で共有できていないと、選考する人によって起こる社員同士のギャップが深まるだけでなく、実際の採用活動のすべてに影響が及びます。
ターゲットを明確にする方法として、モデル社員を一人選出するという方法が挙げられます。実際に社員の中で「こんな人がもっといてくれたら、社内がよりよくなる」という人物を見つけ出すのです。
具体的なモデルがあるため、その社員がどのような特徴を持っているのか言語化すれば、選考基準に落とし込みやすいでしょう。
面接で「前職の退社理由を聞いた時の反応で○○が見られれば、落とす」などの具体的な対応方針を決めておくことで、現場と面接担当者、採用担当者とのギャップを減らすこともできます。
②自社の持ち味を整理する
自社の強みを整理し、求職者が共感するような言葉や表現に落とし込むことで、自社の魅力を伝えやすくなります。
ターゲットとなる求職者と、商品やサービスを通じた直接的な接触がない企業にとって、自社の持ち味を整理することは重要です。どうして自社に来てほしいのかを伝え、魅力的な求人票を制作することで話題性も生まれ、応募者の人数を増やすことにもつながります。
ポイントとなるのは「共感してもらえる要素」です。人が組織に共感する要素は、次の4つであるとされています。
- 組織が持つビジョン
- 組織の仕事そのもの
- 組織のメンバーと接することで得られるもの
- 組織に所属することで得られる権利や待遇
この要素をもとにキャッチコピーや求人広告を考えていくことで、応募者目線で共感しやすい求人内容が作成できます。
ただし、共感してもらえる要素すべてに、自社の強みが当てはまるとは限りません。自社の強みはどの要素に属するのか、その要素があるからこそ求める人材はどのような条件の人なのかを明確にすることが大切です。
③採用データを蓄積して分析する
過去にあった採用時の失敗や、成功した取り組みをデータ化し、分析しましょう。似たようなできごとが起きた際、すぐに対応策を実施できるようにするためです。
評価をおこなう際は、入社までのプロセスを細かく区切り、採用データを蓄積するとよいでしょう。業務単位での評価基準や対応を考えられるため、より具体的な対策がおこないやすくなります。
まずは、前年度にあった採用に関する課題を洗い出しましょう。たとえば「営業担当を応募したが、求める人材の応募が少なかった」という課題があった場合、どの時点で原因が生じたかという見直しが必要です。
見直しにより原因が明らかになったら、それを採用計画に反映します。よりターゲットを絞り込むような言葉を盛り込んだり、キャンペーンを企画したり、原因を解消できるような計画を実施しましょう。
実施後は、結果としてどのような応募者が増えたのか、課題をクリアできたのかを評価していくことで、自社にとっての適切な採用方法を見極められるでしょう。
④スピード感を持って採用活動を進める
優秀な人材だと感じたら、すぐにオファーがおこなえるよう、スピード感を持って採用活動をすることが大切です。競合他社よりも対応が遅いと、条件や対応力を比較されて、辞退される可能性があります。
特に、優秀な人材は多くの会社からオファーをもらっているかもしれません。多数の企業とやり取りをしている人材であるほど、レスポンスが遅い企業への対応は後手に回りやすくなります。
対策として、次のような方法が挙げられます。
- 採用計画や募集の段階でスケジュールを公表する
- 面接日程に柔軟に対応する
- 進展管理機能のある採用ツールを活用する
スケジュールの公表や日程変更への対応をすれば、採用候補者とコンタクトを取りやすくなります。また、自社内で内定を出すまでの業務をわかりやすくするために、やり取りを一元管理できるツールを導入するのも手おすすめです。
⑤採用ツールを活用する
採用ツールを利用することで、求職者に入社後のイメージをより正確に、かつ具体的に持ってもらいつつ、業務の効率化を目指せます。
採用ツールといっても多彩な種類があるため、効果的なツールを選ぶことが重要です。
- 採用に特化したホームページ作成ツール
- 採用向けのSNS投稿動画作成サービス
- 説明会で配布するノベルティグッズ
- パンフレット
- 説明会向けのパワーポイント
おすすめのツールとしては、採用に特化したホームページの製作が挙げられます。採用候補者とのやり取りの窓口を増やせるほか、ツールによっては自社を魅力的に伝えるためのコンテンツを専任担当者に洗い出してもらえるためです。
候補者の紹介にはクラウドエージェントがおすすめ
人材紹介事業において、応募者を効率よく確保しつつ、採用候補者の管理や採用業務の進展管理をおこなうことは重要です。業務効率化をスムーズに進めたいのであれば、膨大なデータ管理がクラウド上で行える、クラウドエージェントがおすすめです。
国内でも導入実績No.1のクラウド型求人データベースで、情報提供の連携もおこないやすく、求人を出している人事担当者と直接メッセージのやり取りができます。豊富な情報量を使いやすいUIで管理・分析することで、求職者への適切な企業紹介も可能です。
また、クラウドエージェントの活用で業務を効率化できれば、実際に求職者を支援できる時間も増え、信頼関係構築に役立ちます。入社後のミスマッチを予防したり、入社前辞退を防いだりすることにもつながるため、企業の採用課題解決にも役立つでしょう。
サービスの詳細を知りたい方は、まずはクラウドエージェントへ資料請求してみてはいかがでしょうか。
企業の採用課題を正確に理解して人材紹介に活かそう
企業の採用課題は、応募者数が少なかったり多すぎたりすること、採用後のミスマッチや内定後の辞退、面接通過数が少ないなど、企業ごとに異なります。
対応策を講じて採用課題を解決し、よりよい人材獲得につなげていかなくては、時間も費用も浪費する一方となるでしょう。そのため、企業は採用課題を把握し、早めに対策をおこなうことが重要です。
また、人材紹介業にとっても企業の採用課題を正確に理解することは、よりよい営業や実績にもつながります。「こちらのサービスを使って入社した人材は活躍してくれる」「こちらで紹介されると採用後に人材が定着しやすい」といった、企業側からの評価も得られるためです。
企業が抱える採用課題を正確に把握して、適切な人材紹介をおこなっていきましょう。
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