独立したばかりのエージェントは、どんなことを考えているのか? がテーマとなる本連載「キャリプロ 人材紹介独立インタビュー」。第2回は、Apreciar合同会社代表・重枝有理さん。「キャリプロ」の人材紹介プログラム研修を受けて開業。数あるビジネスの中から「人材紹介での独立」を選択してどうだったかお話を伺いました。
ずっと「独立したいな」と思っていたんです
――これまでのご経歴をお伺いできますでしょうか?
重枝 短大を卒業後、信用組合で窓口と後方を勤めました。結婚退職して専業主婦を10年していたのですが、その後離婚することになり。離婚する直前に資格をとって、ホテルの支配人の仕事をさせていただきました。
その後、大同生命に勤めてから数年し、「キャリプロ」のお話を伺う機会があって。人材紹介業は自分が向いているのではないか、と思っていましたし、キャリプロの担当者がとても親身に対応してくれたので、信じて独立してみようと思いました。
――転職ではなく独立を選ばれたのは、キャリプロがきっかけだったんですね。
重枝 ずっと「独立してみたいな」とは思っていたんです。事業計画書を作ってみたり、なんの仕事ならできるかとずっと考えていて。その時に「キャリプロ」のお話を伺って、人材紹介業は開業資金ががそんなにかからないなら大丈夫だろうと思ってスタートしました。
――人材紹介以外の仕事で、検討された仕事ってありましたか?
重枝 福祉関係ですね。「福祉用具専門相談員」という資格ができたので、そういう仕事も考えていました。福祉用具でお年寄りの方が亡くなる事故が多いので、そういう形で社会貢献する仕事ですね。ただ、開業に必要な資金が多く、独立前にいろいろ買い揃えないといけなかったりで断念しました。
――独立を選ばれるにあたって、「ここだけは外したくない」部分はどのあたりでしたか?
重枝 とにかく「人に役に立つお仕事がしたい」とずっと思っていました。法人保険の時もそうですけど、ただ保険を販売するだけではなく、その方が困っておられることに対してどこの省庁でも聞きに行くとか、とにかく調べてそれをお伝えするお仕事でしたから。
初成約は、60歳男性の方でした
――人材紹介業は2019年1月ぐらいから、始められたんですね?
重枝 お話を伺ったのが昨年12月ごろで、資格の話を聞いて許認可の番号をもらって手続きに行ったのが年始ですね。そして、起業したのが今年の1月末です。いろいろな手続きが4月までかかってしまい、5月からようやくこのお仕事をさせていただいています。
――最初に決まった求職者は、どんな人だったんですか?
重枝 60歳の男性の方でした。今まで総務のお仕事しかされていなかったんですけど、良い資格をお持ちだったので。
――どんな資格だったんでしょうか?
重枝 「1級管工事施工管理技士」という、配管工事の施工計画の作成や品質管理などをおこなう国家資格なんですよ。建築関係の会社で人事とか総務をなさっていたんですけど、その資格を持ったまま人事をされていたので。
ご年齢が高いこともあり、人事や総務ではなかなかご縁のある会社は見つからなかったのですが、資格を活かせる求人があったので、営業職へのキャリアチェンジがかないました。
これまでやってきていないお仕事でしたし、ペーパードライバーだったのに運転が求められるしで、やはり、慣れるまで苦戦はされているようなんですね。入社後も時々お話させていただいているんですが、それでも前向きに「ここで頑張る」とおっしゃっておられます。
――面談から内定承諾までにどのくらい時間かかりました?
重枝 2週間ぐらいですかね? とっても早かったです。
――となると、そんなに苦労もなかった感じなんですか?
重枝 私の中では苦労しましたね。やはり、すべてが初めてなので、求職者さんにどういうことを聞けば良いのか、どういうことをお伝えしたら良いのか。
段取りと言いますか、人材紹介業のルールがあるじゃないですか。内定をいただくまでは紹介会社が人事と求職者の橋渡しをして。向こうが安心できるようにこっちがリードして動かないといけないところが、流れを全然わかっていなかったので。
私が初めてだったように、求職者の方も人材紹介を使って転職活動するのが初めてだったんですね。転職エージェントを通して企業に連絡をとるという流れも理解されてなかったんです。だから、給料のこととかお休みのこととか、私を介さずに細かいことを人事さんにお話をしに行かれてしまったんです。
そういうトラブルがありながらも、最終的にご本人も納得して、先方の社長さんや人事さんも「ぜひお迎えしたい」となりました。ありがたかったです。本当にみなさんのおかげですね。
――滑り出しとしては最高ですね。
重枝 そうですね。初成約でイレギュラーなことが起きたので、すごい印象に残りました。いろんなことが初めてでどうして良いかわからなかったですよ(笑)。「本当にこれで良いのかな」と思って、労働局から出ている教科書を読み直したり。そんな日々を送ってました。
求職者と直接会うことは、すごく大事。
――人材紹介業では、どういうことが大事だと考えていますか?
重枝 求職者と直接会うことは、すごく大事なんだなと思ってます。
転職活動が何カ月もうまくいってない方もいらっしゃるので、そういう時には直接会いに行くんですね。やはり、お顔を見て話を聞いた方が素直なお話と言うんですか、今の不安な気持ちもお話してくださったりします。
そこからのメールのやり取りとかも、ラフな文章でくれるようになったり。私自身も決まらないことに焦ったりするんですけど、求職者の方のほうがもっと焦っておられるので。私も、度量を大きくしないといけないなと感じます。
――ご自身が提供できる価値は、どのあたりにあると考えておられますか?
重枝 企業様に関しては、ロスのないようにできるだけご希望に沿った方を紹介したいと思っています。
求職者の方に対しては、若い人なら何十年も同じお仕事をされる可能性があるわけで、大変かもしれないけどたくさんの企業を受けてもらって納得いく会社に行ってもらいたいと思っています。
たまたま初成約がスピード成約となりましたが、すぐに決まることは、稀なんですよね。年齢が上の方なら緊急性も高いですが、若い方だったら一生のことなので時間をかけて一緒にやりつつ、何枚も求人票を見て一緒に話をしたいです。
「本来の自分って、こういうことをしたかったんだ」みたいなところを、2人で探っていく作業を一緒に。
それでも、何社も落ちて精神的に苦しくなって、「ちょっと止めたいです」とメールが来ることもあります。
――そういうときは、どう返信するんですか?
重枝 「今はちょっと休まれたらどうですか」と返しますね。もちろん、休んでほったらかしということはできないので、たまに「どう?」とだけLINEを入れてみたりはします。
「休んでも良いよ」と言われることって、みなさんないんですよね。そう言ってくれる方ってあまり周りにいないですから。一見無責任な言葉に見えるんですけど、私は見つめ直す大切な時間だと思うので。
昨日も、「夏が終わるまではゆっくりされたらどうですか」と連絡したら、返信にLINEで長文が来たりしましたよ。そういう方は、自分の言葉の本意が伝わっているなと感じますね。
――伺っていると、すごく充実されていますね。
重枝 楽しく過ごさせてもらっています。でも焦っていますよやはり。
――僕は求職者側の立場なので、「こういう人だったら相談しやすいな」と思いました。
重枝 ありがとうございます。今みんなが自分の子どものように感じているので。みんなに納得するところに決まってほしいなと思っています。
ゆくゆくは、海外の方の支援も進めたいですね
――重枝さんの、今後の抱負を伺えますでしょうか?
重枝 今後の抱負は、今の状況を崩さないで行きつつ、海外の方の支援も進めたいですね。
海外の方の就業の仕方って、2パターンあって。一つは日本に就労として来て安い賃金で働いてる方、もう1つは留学で日本にいらっしゃってる方。
前者のほうは、残念ながら今の私ではご支援ができません。ただ後者、大学からこちらに来られて就職したい方にはなんとかチカラになれるのではと思います。
大阪の外国人センターとかだと、ハローワークみたいに多くの仕事をもらえなかったりするんですね。そういう人たちの仕事のお手伝いもいつかできたら良いなとは思っています。
――2025年に大阪万博もありますし、今後その辺の需要は伸びそうですね。
重枝 できたら私も人を増やして、同じように仕事してくださる方を雇ってやれるようにもなりたいです。
この仕事は、楽しくてやりがいがあると思っています。それでもやはり、凹むことも多いですね。この方の魅力をもっと人事に伝えることができたんじゃないか、私の推薦文で求職者さんの書類が通過しなかったんじゃないかとか。不安はいっぱいありますがもっといろんなこと知って、できるようになりたいなと思っています。
――最後に、独立を検討されている皆さんにメッセージをいただけますでしょうか?
重枝 私はたまたま営業をしてたので、人材紹介業は営業の経験があるとキャッチアップしやすいなと感じました。ご提案していくスタイルの仕事なので、営業職の方にはすごく向いてるんじゃないかなと。人の役に立てる仕事で、需要も絶対あると思います。
――人にフォーカスすると「特にこういう人が向いている」という傾向はありますか?
重枝 人の気持ちに訴えて提案して行くことが多いので、きちんと人の心に寄り添える人が向いていると思います。
――「人々の役に立つ仕事」っていうと、ほとんどの仕事が当てはまるとは思うんですけど、この仕事はその人の人生にダイレクトに関われますよね。
重枝 すごくそう思います。その人の人生とか、その先にいるその人の家族をも幸せにできるのはこの業界しかないですね。良い仕事に就いたなと思っています。
ライター:澤山大輔
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