「人材派遣について詳しく知りたい」「人材派遣会社を始めたいけれども、やり方がわからない」と悩んでいませんか。人材派遣にはさまざまな種類があり、厚生労働大臣による許可がなければ事業を始められません。また、安定収入を得られるものの、利益率が低いといったデメリットもあります。
この記事では、人材派遣の特徴や仕組みを紹介します。ほかにも人材派遣の流れや起業するメリット・デメリット、派遣会社の設立に必要なこと、人材紹介との違いも解説します。
人材派遣とは
人材派遣は、登録している派遣社員を他の企業に派遣するビジネスであり、3つの種類があります。ここでは人材派遣の特徴を詳しく解説します。
自社の雇用する社員を別企業へ派遣するビジネス
人材派遣とは、人材派遣会社に登録している派遣社員を、別の企業に派遣する仕組みのことです。派遣社員はその就業先企業の指揮によって仕事を進めます。
また、派遣社員は、正社員や契約社員のように就業先の起業とは雇用契約を結びません。雇用主は人材派遣会社となるため、給与は人材派遣会社から支払われます。
このように人材派遣業は「人材派遣会社」「派遣社員」「就業先の企業」という3者によって成立するビジネスです。
派遣できる業種は限られている
人材派遣では、あらゆる業種に派遣できるわけではありません。法律によって、次のように派遣できない業務が定められています。
- 港湾運送業務
- 建設業務
- 警備業務
- 医療関連業務
- 「士」の業務
「士」の業務とは、弁護士や司法書士といった「士業」の仕事のことです。ただし、医療関連業務や「士」の業務は、条件や仕事内容次第では派遣できる可能性もあります。
「一部の業務に特化した派遣事業を立ち上げたい」もしくは「すべての業種に携わりたい」という場合、こうした派遣できない業務についての理解を深めておく必要があります。
人材派遣には3つの種類がある
人材派遣には登録型派遣と紹介予定派遣、常用型派遣という3つの種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
登録型派遣
登録型派遣は、派遣会社に登録したスタッフが派遣先で就業し、派遣期間だけ仕事をするスタイルです。「派遣社員」と聞いて多くの人がイメージするのが、この登録型派遣でしょう。
登録型派遣の場合、派遣期間を終えても、派遣先企業と派遣社員が契約更新を望めば、契約期間を延長することができます。ただし、同じ場所で働く期間は3年と定められています。
紹介予定派遣
紹介予定派遣は、最初は派遣スタッフとして仕事をしますが、将来的には、派遣先企業との直接雇用関係が結ばれます。つまり、契約社員や正社員になることを前提とした派遣スタイルです。派遣先企業は、直接雇用が前提のため、事前に面接などによって人材を選考できる点も特徴です。
常用型派遣
常用型派遣は、人材派遣会社に直接雇用された正社員が、別の派遣先企業に出向するスタイルであり、派遣先で就労していない時でも賃金が発生します。登録型派遣とは異なり安定した雇用形態となっているため、優秀な人材を集めやすい種類ともいえます。
人材派遣の流れ
人材派遣ビジネスを進める流れは、まず求職者に派遣会社へ登録してもらい、その後、派遣先企業とのマッチング、派遣契約の締結を行います。ここでは人材派遣の流れを詳しく紹介します。
求職者に派遣会社へ登録してもらう
人材派遣ビジネスは、派遣する人材がいなければ始められません。そのため、まずは求職者に登録してもらいます。人材派遣会社は求職者に対してカウンセリングを行い、場合によってはスキルチェックも実施して、希望職種や労働条件を確認します。
詳細にヒアリングをしなければ、どの会社のどの職種にマッチするか判断することができないため、面談を怠らず丁寧に行うことが大切です。
派遣先企業とのマッチングと派遣契約の締結
求職者を登録した後、派遣会社は登録者に合った仕事を探して紹介します。派遣する会社が決定したら派遣先企業と派遣契約を締結し、就業する予定の派遣社員に対して就業条件や仕事内容などを説明します。派遣先企業とのマッチングを行う際、職場見学をおこなうケースもあるようです。
同意が得られたら登録者は派遣先で就業し、対価として人材派遣会社は派遣手数料を得ます。派遣社員への給料はこの派遣手数料から支払います。
以上が人材派遣ビジネスの大きな流れです。
人材派遣と人材紹介の違い
人材派遣と同じ人材サービスに、人材紹介がありますが、これらは似て非なるものです。ここでは、人材派遣と人材紹介の違いを解説します。
サービスと雇用主の違い
人材派遣は、自社に登録した人材を派遣先企業に派遣するサービスをおこなっています。つまり、派遣社員と雇用契約を結ぶのは人材派遣会社です。
一方、人材紹介はクライアント企業の採用要件を満たす人材を紹介するサービスです。人材紹介会社と求職者の間に雇用関係はなく、あくまで就職活動をサポートする立場でしかありません。求職者の採用が決まると、求職者は就職先の企業と雇用関係を結ぶことになり、給与を支払うのも採用した企業です。
報酬発生のタイミング
人材派遣と人材紹介は、報酬発生のタイミングも異なります。人材派遣の場合、派遣している期間に報酬が発生するため、安定した収益を目指すことができます。
対して、人材紹介の報酬発生のタイミングは求職者の採用が決まったときのみです。人材紹介は成功報酬型の収益モデルであり、採用者が出なければ報酬はありません。採用が決まった際、紹介先の企業は人材紹介会社に対して採用者の年収の30%~35%を支払うことが一般的です。
許可要件にある資本金の違い
人材派遣もしくは人材紹介を始める際、責任者や事業所などにおいてそれぞれの許可要件に違いがあります。中でも資本金の金額は大きく異なります。人材派遣の場合、資本金は2,000万円、現預金は1,500万円以上必要です。そのため、自己資金に余裕のない場合は許可要件を満たせず始められない可能性があります。
対して、人材紹介を始める際に必要な資本金は、500万円と派遣よりも低くなっており、現預金の額も150万円以上と、10分の1の金額です。資本金の要件を考えれば人材紹介の方が起業しやすいといえるでしょう。
人材派遣会社を起業するメリット・デメリット
人材派遣会社を起業するときは、メリットばかりでなくデメリットについても把握して、事業を成功させる計画を立てましょう。ここでは、人材派遣会社を起業するメリット・デメリットともに紹介します。
人材派遣会社のメリット
人材派遣会社を起業するメリットは、他の人材サービスよりも市場の規模が大きいことです。2021年度の事業者売上高は、人材派遣業市場が9兆2,000億円、人材紹介業市場が2,960億円でした。大きな市場だからこそ、その中でシェアを獲得すれば、ビジネスとして成功させられるでしょう。
また、人材派遣は人材紹介に比べて利益率が低いものの、社員を派遣している限り安定した収入を得られます。「大きな市場規模」「安定収入」が、人材派遣会社のメリットといえます。
参考:株式会社矢野経済研究所
人材派遣会社のデメリット
人材派遣会社のデメリットは、営業利益率が低いことです。派遣社員に関する費用と派遣社員の給料、さらに諸経費を差し引くと、派遣会社の営業利益は1.2%しかありません。派遣先企業から支払われた料金のうち、70%は派遣社員の賃金となり、15.1%は派遣社員への社会保険料や有給費用となります。
他の業界と比較すると、製造業は5.5%、小売業は2.8%、卸売業は1.9%の営業利益のため、人材派遣の利益率は低いことが分かります。このように、高利益のビジネスではないことが人材派遣会社のデメリットです。
参考:経済産業省
人材派遣会社の設立に必要なこと
人材派遣会社の設立には、労働者派遣事業許可を取得し、派遣元責任者講習を受講しなければなりません。ここでは、こうした人材派遣会社の設立に必要なことを詳しく見ていきましょう。
労働者派遣事業許可の取得
人材派遣会社を設立するためには、厚生労働大臣から労働者派遣事業許可を取得する必要があります。労働者派遣事業許可の申請条件は次の4つです。
- 特定の人にだけ派遣を提供する目的できない
- 雇用管理を適正に行える能力を持っていること
- 個人情報を管理できる仕組みがあること
- 人材派遣を的確に行える能力を持っていること
その他、2,000万円以上の資産要件があり、20平方メートル以上という事業所の要件もあります。労働者派遣事業許可の申請は各都道府県の労働局で行います。
派遣元責任者講習の受講
労働者派遣事業許可を取得するだけでなく、派遣労働者への教育サポートや管理を行う派遣元責任者も配置しなければ、派遣会社を設立できません。派遣元責任者になるためには、事前に派遣元責任者講習を受講する必要があります。派遣元責任者になるための要件は、次の通りです。
- 未成年者ではなく、欠格事由に該当しないこと
- 生活根拠が安定し、良好な健康状態であること
- 3年以上の雇用管理経験があること
欠格事由とは、過去に法律や刑法などに違反したり、破産したりしていることを意味します。欠格事由がある場合は派遣事業の許可が下りないため、注意が必要です。また、派遣元責任者講習は3年ごとの受講が定められているため、忘れないようにしましょう。
起業する前に人材派遣を詳しく理解しておこう
人材派遣は、登録している派遣社員を他の企大きく遣するビジネスです。派遣できる業種は限られているものの、登録型派遣と紹介予定派遣、常用型派遣という3つの種類から選べます。人材派遣を進める際は、まず求職者に派遣会社へ登録してもらい、その後、派遣先企業とのマッチングと派遣契約の締結を行います。
こうした特徴を持つ人材派遣会社を起業するメリットは、市場規模が大きく安定した収入を得やすいことです。一方、他業界に比べて営業利益率が低い傾向にあります。また、人材派遣会社の設立には、労働者派遣事業許可を取得し、派遣元責任者講習を受講しなければなりません。
また起業の要件の中でも資本金のハードルが高いです。もし2,000万円の資本金の準備が難しい場合は、500万円で起業可能な人材紹介業を検討してみてはいかがでしょうか。
人材紹介を始める際は、人材紹介会社向けサービスである「クラウドエージェント」の利用をおすすめします。クラウドエージェントは、人材紹介ビジネスをサポートしてくれる候補者管理機能や進捗管理機能、自社求人管理機能といったさまざまな便利機能があるだけでなく、専任コンサルタントによる支援も充実しているため、事業を成功できる可能性が高まります。
無料で相談・資料請求ができるので、この機会に利用してみてはいかがでしょうか。
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