「会社を辞めたい理由を、正直に言ってもよいのだろうか。」これは求職者の多くが悩んでいる問題です。中には本音で話すことをためらい、取り繕った理由を口にする人もいます。
しかし、企業と求職者のマッチングを成功させ、早期退職者を出さないためには、求職者の本音を聞き出しておく必要があります。そして上司や企業へどのように退職理由を伝えるべきか、適切なアドバイスができるように準備しておきましょう。
この記事では、退職理由を知っておくメリット、求職者が抱える退職理由、現職の上司に退職を伝える際のポイント、企業との面接で退職理由を聞かれたときの返答、案件を紹介するときのポイントなどを解説します。
- 人材紹介会社が退職理由を知っておくメリット
- 求職者の仕事に関わる主な退職理由
- 求職者の仕事以外の主な退職理由
- 退職を会社(上司)に伝える際のポイント
- 企業との面接で退社理由を答えるときのポイント
- 求職者に案件を紹介するときのポイント
- 企業を紹介する前に退職理由は必ず確認しておこう
人材紹介会社が退職理由を知っておくメリット
求職者の退職理由を知っておくことは、人材紹介会社にとって多くのメリットがあります。どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
求職者に合った職場を探しやすい
年収に不満を持っている人に、現在よりも年収が下がる仕事を紹介してもうまくいきません。また、「家族との時間を今よりも多く持ちたい」と思っている人に、残業が多い仕事を紹介しても合わないでしょう。
このように、退職理由を把握していないと、求職者が求める仕事をうまく紹介することができません。案件を紹介する前には、転職条件だけではなく会社を辞めた理由も必ず聞いておきましょう。
求職者が求める職場環境を提案することにより、マッチング率を上げ早期退職を減らせます。
また退職理由は語りにくいものです。中には本音を隠して、うわべだけの回答をする人もいます。求職者に本当にふさわしい職場を探すためにも、人材紹介会社は求職者から本音を聞き出す必要があります。密にコミュニケーションを図り、信頼を勝ち取りましょう。
面接での回答方法をアドバイスできる
企業との面接では、退職理由を必ずといっていいほど聞かれます。これは同じ理由で会社をすぐに辞められては困るからです。
退職理由についての返答にはコツがあり、同じ理由を説明するのでも、答え方で相手に与えるイメージが大きく変わります。特にやってはいけないのは、現在勤めている会社に対する批判や愚痴を口にすることです。
たとえば、配属された仕事内容に不満があった場合も「ノルマや売上ばかり押しつけてくる営業職に、興味を持てなかったからです。」と答えるよりも、「現在営業職に配属されていますが、ノルマや売上が最も重視されています。それらが大切なことはわかっていますが、よりクライアントに満足していただけるようなサービスを提供したいと考えるようになりました。御社では、お客様の満足度を第一に考えていて、よりお客様に寄り添ったサービスを提供できると考えました。」のほうが、面接での好感度も上がります。
人材紹介会社は求職者の退職理由を知ることにより、適切な回答方法をアドバイスできるようになります。
求職者の仕事に関わる主な退職理由
転職を考えるのは、仕事や待遇に何らかの不満があるからです。一般的にどのような理由で転職を考えはじめるのか、仕事に関わる退職理由を見ていきましょう。
給料や待遇に不満があった
退職理由でよく見られるのが、給料や待遇への不満です。いわゆるブラック企業では、残業が多いのに残業代が支払われなかったり、結果を出し続けても昇級がなかったりします。
昨今では、インターネット上で法律の知識や情報などを得て、自分の置かれた劣悪な職場環境に気づくケースもあるようです。
また、若い頃は給料よりも仕事のやりがいや楽しさを重視しがちですが、年齢を重ね、結婚をしたり子供ができたりして、より高い年収が必要になる人もいます。この場合は、転職する理由が「給料」とハッキリしているので、別の業界や職種も紹介しやすくなります。
別の業界や職種を紹介するときは、求職者の不安を取り除くためにも、よりよい条件で働くためのアドバイスや、異なる業界または職種で働くことのメリットを伝えられるとよいでしょう。
仕事が合わなかった
どれだけ企業研究をしていても、学生時代の想像と実際の仕事内容にはギャップがあるものです。格好いい仕事だと思っていたけれど、実際は意外と泥臭い仕事だったというように、新卒入社後に「イメージと違った」ということが多々あります。
また、就職活動に失敗して、希望していた仕事に就けなかった人もいます。この場合、やむを得ず別の仕事に就職したものの、夢を諦めきれずに再チャレンジしたいと考えて転職を希望することもあるでしょう。
転職して新しい仕事に就いても同じことがおきないように、「事務作業が苦手」「接客が嫌いだった」など、仕事内容のなにが合わなかったのか、具体的にヒアリングしておくことが大切です。
職場の人間関係がうまくいかなかった
職場の人間関係も重要です。仕事内容に満足していても、上司や同僚との関係がつらいと、仕事を続けるのは難しいでしょう。また、人間関係に悩みすぎると、躁鬱病や適応障害などで体調を崩すこともあります。
職場内のいじめ、モラハラやパワハラなどの外部要因が理由で退職を考えているのなら、職場環境が変わり、ストレスがなくなることで本来の実力が発揮できるようになるかもしれません。具体的にどのような状況にあり、なにに悩んだのか聞き出しておくとよいでしょう。
また、人間関係がうまくいかずに転職を繰り返している場合、人材紹介会社は注意が必要です。転職回数が多い場合、求職者本人に人間関係がうまくいかない原因があるかもしれないからです。
面談する中で、求職者がどのような人物なのかしっかり見極めましょう。
求職者の仕事以外の主な退職理由
退職理由には、仕事に関すること以外でもさまざまな理由があります。ここでは、ほかにどのような理由があるのかを見ていきます。
病気になり仕事を続けられなくなった
体や心の病気になり、療養のために仕事を続けられなくなった人たちもいます。以前と同じような仕事を探す人もいれば、体に負担のない仕事に変えようと考える人もいます。
この場合、すでに病気が完治しているのかどうかに注意しましょう。完治していて再発しないと考えられるなら心配はいりませんが、万が一、入社後に病気が原因で早期退職をしたり、予定していた業務が滞ったりするようでは、紹介した相手企業との間にトラブルが起きかねません。
現在も治療中なら、相手企業にも伝える必要があります。また、勤務に支障をきたしそうな場合は、しっかりと療養してまずは復職できる程度まで病気を治すように、求職者にアドバイスしましょう。
ライフスタイルが変化した
独身時代は、時間もお金も自分の思うように使うことができます。しかし、ライフスタイルは変化します。結婚のために引っ越したり、出産や育児のために仕事を辞めたりすることもあるでしょう。子供ができれば出費や貯金、教育費について考える必要があり、親の介護も始まるかもしれません。
そのような場合、「勤務地」「給料」「勤務時間」の優先順位を、明確に把握する必要があります。
2019年の雇用動向調査において、介護や看護を理由に退職した人は、退職者785万8100人のうち10万200人にのぼります。
求職者の退職理由が介護ならば、施設に入所できて介護の問題が解決したのか、それともホームヘルパーさんが帰るまでに帰宅しなければならないのかなど、状況をできるだけ詳しく聞いておく必要があります。それにより、紹介できる仕事内容も変わってくるからです。
転勤や住み替えで引っ越しをした
通勤にまつわる退職も多く、次のような理由があります。
- 配偶者が転勤となり、ついて行かなければならない
- 転勤を命じられたが、希望しないので退職を考えている
- 新しく家を住み替えたので、通勤が難しくなった
このような場合は、勤務できなくなった理由が仕事関係やライフスタイルの変化ではないので、退職理由を質問されても答えやすいでしょう。
退職を会社(上司)に伝える際のポイント
現在勤めている会社の上司に、いつ、どのように退職を伝えるかは重要です。トラブルにならず円満に退職するためのポイントを解説します。
退職の報告は1カ月前までに行う
現在勤務している会社とトラブルなく円満に退職するためには、引き継ぎまで責任を持っておこなう必要があります。社員内で引き継ぐのか、それとも補充要員を募集するのか、会社としても準備期間が必要です。
そのため、退職の報告は遅くとも1カ月前までにおこないましょう。詳細は就業規則に記載されているので、事前に確認しておくとよいかもしれません。繁忙期の退職は、できるだけ避けたほうがよいでしょう。
また、法律上の規定もあります。民法第627条には、雇用期間が決まっていない場合、解約の申し入れから2週間経過することにより雇用を終了できる旨が記載されています。
就業規則と民法のどちらが優先されるかは、専門家の間でも意見が割れるようです。すぐに会社を辞めたい希望があるかもしれませんが、退職準備期間は長めに取っておくほうがよいでしょう。
さらに、手順書やマニュアルの作成、資料の整理などをしておくのもおすすめです。後に任される人のことを考えて引き継ぎ準備を行っておけば、快く退職を承諾してもらえる可能性が高まります。
会社への不平不満は言わない
会社のやり方や、上司に不平不満を抱えて退職することもあるでしょう。「最後だから言いたいことを言って出て行く」とばかりに、これまでため込んできた愚痴や批判を口にする人がいます。しかし、それはあまり得策ではありません。
ネガティブな印象を与えるだけでなく、「問題が改善されれば残るのか」と引き留めに合う可能性もあります。また、会社への批判を聞いて、好意的でいられる人は多くありません。同じ業界内で悪い噂が出回らないためにも、円満な退職を目指しましょう。
はっきりとやめる意思表示をする
強い引き留めに合うと、つい「私はこの会社で必要な人材かもしれない」と、気持ちが揺れることもあるでしょう。人材を確保しにくい業界や、ブラック企業ほど引き留めに力を入れてくる場合があります。
しかし、気持ちが揺れた隙を突かれて、思い通りに退職手続きが進まなくなる可能性もあります。退職は口に出しにくいかもしれませんが、躊躇せずにきっぱりと意思表示をおこないましょう。
退職の決意が固いとわかれば、会社も引き継ぎや人材確保に向けて動き出します。
企業との面接で退社理由を答えるときのポイント
求職者が企業の面接を受ける上で、必ずといってもいいほど質問されるのが退職理由です。ここでは、退職理由を答える際のポイントを解説します。
事実は正直に伝える
「本当のことを話したら、採用されないかもしれない」と思うこともあるでしょう。しかし、採用されて働き始めたあとのことを考えたなら、正直に答えたほうが賢明です。マイナスの印象を与えるような事実も、話し方次第でプラスに変えることができます。
また、体調不良で退職した場合も隠さず話しましょう。その上で「完治している」「服薬しているけれど勤務に支障がない」というように、現在の状況を知らせます。必要ならば勤務に支障がない旨を、医師に一筆書いてもらってもよいかもしれません。
もしもすべて伝えた上で採用されない場合、その会社には縁がなかったのだと割り切ることも大切です。
志望動機や労働意欲へと変換する
勤めていた会社に対する不平不満は、聞いていて気持ちのよいものではありません。「意見をいっても上司が聞いてくれない」「ルーチンワークしかない、仕事がつまらない」などの理由は、少し言い方を変えるだけで好印象を与えられます。
たとえば「若手の意見も大切にする、御社の社風に惹かれました」のような志望動機に変えたり、「新しいことに挑戦し、結果を出していきたい」のように労働意欲をみせたりすることも可能です。
会社に対してネガティブな感情を持っている求職者は、なかなかプラス思考で考えられません。人材紹介会社はそのような求職者の気持ちをくみ取り、表現方法を変えるアドバイスをしましょう。
簡潔にまとめてハキハキと答える
面接では、どのような質問に対してもハキハキ答えることが重要です。それは退職理由を述べるときも同様です。言い訳がましく長々話したり、もごもごと口ごもったりすれば、まるで後ろめたいことがあるかのように見えてしまいます。
そのような話し方では好印象は抱いてもらえません。どんな内容を語るときでも、自信を持って簡潔に話しましょう。
求職者に案件を紹介するときのポイント
求職者に案件を紹介したとき、気をつけるべきことがあります。ポイントを押さえて、企業と求職者に合った仕事の橋渡しを成功させましょう。
離職率を下げるためにフォローアップをしっかり行う
求職者の前に求人広告を並べるだけが、人材紹介会社の仕事ではありません。求人広告を見るだけならば、インターネット上に多くの情報が並んでいるはずです。
求職者にとっては、第三者から見た客観的な「合っている仕事」を知ることができる点や、面接や書類などへのフォローアップが人材紹介会社を活用するメリットです。
求職者の話にしっかりと耳を傾け、その人に適した仕事を紹介しましょう。また、案件を紹介したあとも企業と求職者の橋渡しをすることで、イメージとのギャ ップをなくし、離職率を下げることができます。
求人データベースを活用する
業務がたくさんあると、求職者との面談やフォローアップがないがしろになってしまいます。よりよいマッチングを図るためには求職者の悩みを知らなければなりませんが、信頼関係が築けていないと、求職者はなかなか本音を話してくれません。
業務を簡略化して、コミュニケーションやフォローアップに集中したいと考えるのならば、人材紹介サービスの求人データベースを活用するのがおすすめです。
業務内容の効率化を図るだけではなく、豊富な求人データベースにアクセスできるため、求職者にあった案件を紹介しやすくなります。
求人データベースに興味があるのなら、求人数や導入数でNo.1をほこるクラウドエージェントを検討してみるとよいでしょう。契約後すぐに8,000件以上の求人にアクセスすることができます。サービス内容を知りたい場合には資料請求をしてみましょう。
企業を紹介する前に退職理由は必ず確認しておこう
環境が変わることで、本来の実力を発揮できるようになる求職者もいれば、新しい職場でも前職と同じ理由で退職してしまう人もいます。早期退職率を減らしてよりよいマッチングを図るためには、退職理由をしっかりと確認しておかなければなりません。
求職者に本音を話してもらうには、信頼関係が大切です。簡略化できる業務は簡略化して、求職者と密なコミュニケーションを図り、信頼関係を構築しましょう。そして、真の退職理由を知った上で案件を紹介し、求職者と企業のよりよい橋渡しを実現しましょう。
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